文字
コミュニケーション能力の4つの力の中でもっとも難しいのが、相手の感情を読み取る力と言われます。昔から「顔色を読む」などと言う言葉があるように、相手の表情を見て、その人の想いを察することの重要さは言うまでもありません。しかし、身につけるには難しい能力で、そのための講座や訓練もあるくらいです。独学で修得するのは難しいそうです。ですが、概要だけでもまとめてみようと、顔の表情やしぐさから感情を読み取るポイントを整理してみました。お時間があったらお付き合いください。
コミュニケーションに必要な力
コミュニケーションは、双方向なやり取りなので、発信と受信があって成立します。また、その伝え方・聴き方も、論理的か、感情的かに分けられます。そこからコミュニケーションに必要な4つの力をイメージでまとめたのがこちらです。
コミュニケーション能力を構成する4つの力とは、
・論理的に伝える力
・論理的に聴く力
・感情を伝える力
・感情を読み取る力
になります。
先日、論理的に聴く力を整理してみました。
そこで、今回は感情を読み取る力について整理してみます。
相手が今どのように感情を抱いているか、言外に何を伝えようとしているのかを、表情や口調、身振りなどから読み取り、察知できるようになったらうれしいですね。相手の本心は言葉では語られないことが多いので、重要なサインを見逃さないようにしたいものです。とはいえ、4つの力の中では、もっとも難しい力です。なので、今回は概要を理解しやすく整理することを目指してみます。
表情から読み取る
人の表情は、雄弁です。下に示したような表情はわかりやすい例ですね。
様々な研究から多くの表情があることが分かっています。その中で、「幸福」「軽蔑」「嫌悪」「怒り」「悲しみ」「驚き」の7種類は、文化や民族、性別、年齢に関係なく人が共通に持っている特性だそうです。そして、こうした微妙な変化を「微表情」と言います。この微表情とは、
「抑制された感情がフラッシュのように一瞬で表れては消え去る微細な顔の動きのこと」を言うそうです。表れる時間にして0.2秒以下です。
こうした微表情については、いろいろな本がでていますが、この記事では以下を主に参考にさせていただきました。
こちらは、さらに詳しく書かれたポール・エクマン先生の著書です。
- 作者: P.エクマン,W.V.フリーセン,工藤力
- 出版社/メーカー: 誠信書房
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では、詳しく見ていきましょう。
笑顔
笑顔の表情について見てみましょう。笑顔は、受容、期待、承認、喜び、楽しみなどの肯定的な感情を言います。幸福の表情は、何かが満たされた時に現れるもので、同意や好意を懐いているときも現れます。
笑顔の表情の主な特徴は、
・口角が上がる
・頬が上がる
・目尻にシワができる
といった点にあります。
上図引用:よい顔を創る 新人物往来社 p.246,247
また、笑顔については、本当に笑っている時と、作り笑いの時があり、いくつかの違いがあります。
本当に笑っているとき
まず、口が笑って、次に目が笑う。
身体全体も楽しげに動く。
作り笑顔のとき
目と口が同時に笑う。
口は笑っているが目が笑っていない場合もあります。
また、顔の左側だけが笑っていることもあります。これは、右脳が顔の左側を支配しているためです。右脳は感情を制御しています。なので、感情が出やすい左側に注目すると良いそうです。
反対に、顔の右側は左脳が支配しているので、論理優先の顔となるそうです。
このことから、好意を寄せる人と話す時は、左の顔の表情を見せると良いと言われています。反対に、別れたいとか厳しい交渉をする時は右側を見せるといいそうです。
軽蔑
軽蔑は、優越感・さげすみ・冷ややかな気持ちなどを含む否定的な感情です。
この表情の特徴は、「片方の口角があがる」というもので、基本的な表情の中で唯一左右が非対称な表情です。
こうした表情が現れたら注意が必要ですね。
日本人の多くは、「軽蔑」「怒り」「恐怖」「嫌悪」を読み違えることが多いそうです。あまり、表情を出さない国民性の為と言われています。
日頃から観察して判別する力をつけるよう心がけたいものです。
悲しみ
悲しみは、失望、喪失、敗北感、期待外れなどの否定的な感情の表れです。
悲しみのサインに気づくと、相手はなぐさめようとします。そんな点を人は、同情心を引き起こすために利用することもあります。ので、意図しているのか自然な感情なのかを見極めることも必要です。まあ、そんなに簡単ではないですね。さきほどの左右の顔の表情差などを判断に利用することになります。
悲しみの表情の主な特徴は、
・口角が下がる
・下唇が上がる
・眉が中央に寄る
といった点にあります。
その他の表情については、こちらの記事に詳しく書いています。参照ください。
目の動きから読む
「目は口ほどにものを言う」という格言があるように、目の動きは表情の中でも雄弁です。目の動きがどんな感情を表しているかをまとめたのがこちらの図です。
視線には色々な意味が含まれます。
たとえば、あなたへの関心度を表しています。あなたと話しをしたいのか、したくないのか興味のある話しなのか、そうで無いのか、視線の動きに相手の心理が出てきます。
あなたが質問すると、う思ったか無言のサインが目に現れてきます。ですので、目の動きから相手の気持ちを探ろうとする場合、知りたい本心を問う質問とその直後の目の動きに注目すると良いそうです。
左上(あなたからみると右上)に動く時は、記憶などを思い出す「体験的視覚」動作です。たとえば、「昨日は、何をしていたの?」と聞いた時に右上に動いたら、記憶を確認していることの現れです。
一方、右上(あなたからみて左上)に目が動いたら、創造的視覚が働いています。先ほどと同じ「昨日は何をしていたの?」と聞いて、このように反応していたら、なんと答えるか考えているかもしれません。
すべての反応をここでは紹介できないので、その他の動きについては、これらの記事からどうぞ
しぐさからわかること
コミュニケーションは、言葉だけでなく、表情や手足のしぐさなどの非言語コミュニケーションから伝わる心理もあります。たとえば、手のしぐさでは、こんなことがわかるといわれています。
腕組み
腕組みの分かりやすい反応は「拒否・拒絶」ですね。これは、自己防衛の反応とも言われています。攻撃から身を守り、逃げる体勢を整える前触れです。この動作が相手に出てきたら自分の発言や行動を振り返り修正したほうがいいでしょう。また、かなり腕組みが上の方で行われている場合は「批判」という「上から目線」になっている可能性があります。その他、一人の時は考え込んでいる「集中」の時のしぐさでもあります。
ほおづえ
不満や不安を持っていて、癒やされたいとか、慰めてほしいと感じている可能性があります。この動作が相手に出たら話しに集中していない証拠です。たいくつしているサインかもしれません。あなたばかり話していないかチェックしてみてください。自分が話すのをやめて、相手に話す機会を譲る必要がありそうです。
鼻をこする
やましいことがあったり、ウソをついてごまかしているときに、その緊張から出ている可能性がある動作です。男性が目の前の女性に好意を持っていて照れ隠しの場合もあります。内気な人で、言葉に出すのが苦手なことを手のしぐさに出している可能性もあります。心理的に安定していないので、その後の話し方では相手の本心を突くような発言は慎んだほうがいいかもしれません。目をこするなど、顔の一部を触るのは同様なサインと見て良いそうです。
より詳しい内容を、こちらにまとめています。良かったらご覧ください。
言葉より、表情やしぐさなどの非言語コミュニケーションが優位なことを示す法則がメラビアンの法則です。メラビアン先生が、UCLAの学生に対して行った印象的実験の結果、2者間の対話では言葉が優先される割合は7%、聴覚的な特徴(声の抑揚や大小)38%、視覚情報(顔の表情など)が55%だったというものです。この法則の意図は別にあるとも言われていますが、感情を読み取る場合、声の抑揚や顔の表情などからの情報が重要であることには変わりません。日ごとから相手の表情やしぐさからどんな感情が読み取れるかをよく観察して理解度を高めておくことは無駄ではないと思います。
おわりに
表情やしぐさから感情が読み取れます。しかし、日頃から訓練していないとなかなか理解するのは難しいスキルです。目の動きや手のしぐさを注意深く観察して理解を深めておきたいものです。顔の左右でも現れる表情の意味が異なることも知っておきたいものです。感情は右脳が司る左に出るという理解をしておくだけでも有効でしょう。
ところで、こうした感情を読む点についてもAI技術の進歩が貢献することが予想されます。下の図は、株式会社ユーザーローカルさんからの引用です。
左の写真の通り、表情の感情が「喜び80%」という具合に数値化されています。こうした技術がさらに進化すると表情の読み取りもいすれはARグラスを使ってリアルタイムに観察できるようになるかもしれません。
そういえば、「科捜研の女 シリーズ16」の第1話に微表情を解析するシステムが登場していました。こんな風に感情が読み取れるようになるのはうれしいですが、読み取られる側になったらかなりやばそうな感じもします。さあ、どうなることやら……
出典:科捜研の女16第1話より
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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終わり