コミュニケーション能力
「論理的に聴く」のは難しいと感じている人が多いようです。たしかに、私もそう感じます。そこで論理的に聴くためのコツを整理してみました。良かったらお付き合いください。
コミュニケーションに必要な力
コミュニケーションは、双方向なやり取りなので、発信と受信があって成立します。また、その伝え方・聴き方も、論理的か、感情的かに分けられます。そこからコミュニケーションに必要な4つの力をイメージでまとめたのがこちらです。
コミュニケーション能力を構成する4つの力とは、
・論理的に伝える力
・論理的に聴く力
・感情を伝える力
・感情を読み取る力
になります。
先日、論理的に伝える力をお伝えしました。
その中で、椅子オタクでWebライターもされているmashleyさん(id:mashley_slt)から、「論理的に聞くというのもスキルが必要で、難しい」とコメントをいただきました。
mashleyさんは、先生をされていたこともある方なのに「聞くのが難しい」と感じることがあるのですね。
実は、私もそう思っています。
診断士の仕事をする中で、色々な企業の方からお話を伺う機会があります。たとえば、事業計画の作成に当たって、経営者の夢や、自社の強み弱みなどを聞き出さないといけません。しかし、中々思うようには引き出せていないと反省することが多いです。
その理由を自分なりに上げてみると、
・相手に応じた聴き方が上手く出来ない
・聴きたいことを適切に伝える質問が見つからない
・自分の聴き方の癖が理解の邪魔をしている
などです。おそらく多くの方と共通する点では無いかと思っています。
相手が論理的思考の方であれば、論理的に聴くのは容易です。論理的に適切な質問ができれば、的確な返答が得られます。
一方、相手が感覚優位の方だと会話はかなり蛇行します。気持ちをくみ取りながら適切に質問を繰り返し目的の内容を引き出していかないといけません。
どちらにせよ、相手のコミュニケーションの傾向を正しく理解して、それに合わせた質問の仕方をしていくことになります。
聞きたいことをきちんと引く出すのは、中々難しいですね。
ということで、まずは質問の種類や仕方を整理してみましょう。
質問の種類と使用場面
質問の種類は色々ありますが、私は以下の6つの分けています。
質問の種類
開いた質問:メンバーが自由に答えられる余地を残した聴き方
閉じた質問:考える範囲を限定し1つの答えを引き出す時に用いる
未来質問 :メンバーのこれからの行動を引き出すときに用いる
過去質問 :過去の出来事を振り返るように仕向ける質問
肯定質問 :メンバーの考えを同意したり認める質問
否定質問 :考えを否定することで成長のきっかけを作る質問
この中で、特に重要なのが以下の4つの質問です。場面ごとに使い分けていきます。
4つの質問を2軸で整理し、場面ごとに分けます。
2軸は、
タテ軸に「開いた質問」」と「閉じた質問」
ヨコ軸に「未来質問」と「過去質問」
です。
場面は以下のようになります。
①事実や原因を確認する場面
②相手の想いを確認する場面
③相手の理解を引き出す場面
④相手の想いを引き出す場面
例を見てみましょう。
①事実や原因を確認する場面での質問
過去について閉じた質問をします。たとえば、
あなた:「昨日の夜は、外出したの?」
相手: 「はい」
あるいは、
あなた:「昨日の夜は、家にいましたか?外出しましたか?」
相手:「昨夜ですか? 外出をしていました」
といった具合です。
閉じた質問なので、相手が、「はい」か「いいえ」で答えられる質問か、答えが制限される聴き方をします。
②相手の想いを確認する場面での質問
未来(これからしようとすること)を閉じた質問で行う。
あなた:「この問題の再発防止は、設備メンテの見直しからかなぁ?」
相手: 「私も、そうだと想います」
③相手の理解を引き出す場面での質問
相手が認識している事実(過去)を開いた質問で行う。
あなた:「不具合の状況を教えてくれないかな?」
相手: 「昨日23時に、△工程でA設備が、緊急停止して~」
開いた質問は、自由の答えてもらう余地を残した質問ですが、基本的には5W1Hに沿って質問していくことになります。
なので、相手が上手に答えられない時は、5W1Hに質問を分解して聴いていきます。
あなた:「昨日の不具合は何時に発生したの?」(When)
相手: 「昨日20時頃です」
あなた:「そうか、遅くに発生して大変だったね。どの工程のどの設備だったの?」
相手: 「△工程のA工程の△設備です」(Where)~以下続く
④相手の想いを引き出す場面での質問
未来について開いた質問をします。
あなた:「今後、やりたいことは何ですか?」
相手: 「今年は、OOの資格取得にチャレンジしたいです!」
質問の仕方
相手が、コミュニケーション上手とは限りません。多くの場合は、上手に話せない人と思って会話をスタートします。相手に、上手に質問できると会話を深められます。
閉じた質問は、答えやすいので、事実の確認や、相手の意思や考えを端的に引き出す、あるいは、初めての方と会話の取っ掛かり見つける時などに活用できます。また、面談や初見の方との会話では、アイスブレークという会話のはじめに用いる答えやすい質問でも利用します。また、相手の思考を会話の目的に引き戻す時などに有効です。
多くは、閉じた質問→開いた質問→閉じた質問………というように、まず閉じた質問から始めて、交互に質問をしていくのが良いと言われています。
過去質問は、多くは「なぜ」を用いて原因や事実を求める質問になります。過去質問で有名なのは、トヨタ式のなぜなぜ問答とか分析といわれる質問に仕方です。
あなた:「経費が計画をオーバーしたのはなぜ?」
相手: 「材料費が計画を超過しました」
↓
あなた:「材料費が計画以上にかかったのはなぜ?」
相手: 「工程の歩留まりが悪化して投入を増やしたからです」
というように「なぜ」を深めていき原因などを分析していくのに利用します。
未来質問は、「何のために」とか「どのように」などの表現を多く用います。
たとえば、問題解決の場面で、
「この工程の歩留まりを上げるにはどのようにすると良いと思いますか?」
というような質問の仕方になります。
他、面談の席などで、
「あなたのその取り組みは何のためにしていますか?」
「Aさん、あなたが今一番解決したい問題ってなんですか?」
などと聞いたりします。
こちらも、使う場合は、順番を意識すると良いでしょう。答えやすい過去質問から入って、将来の事を訪ねる未来質問をする。といった進め方ですね。
質問が上手にできるとこんな効果が期待できます。
相手が期待通りに動いてくれる
上手に分かりやすい質問すると、相手の考えを理解しやすくなるだけではなく、あなたの想いも伝わりやすくなります。すると、相手もあなたの意思を理解して自発的にあなたの期待する会話をしてくれるようになります。
質問上手になるポイントをいくつか上げてみます。
①聴く姿勢(傾聴力)を身につける
質問は、相手の認識している事実や考えを引き出すものです。ですので、まずはきちんと相手の話を聴くことが大切です。聴くは8割などとも言います。
・相手に目線を合わせ、身体も向け聴く姿勢を作ります
・「はい」「そうですね」「すれから」など相づちを返すとさらに効果的
・もっとも大切なことは、「沈黙」相手が話しの途中で思案中はじっと待つ
特に「沈黙は金」ですね。最低30秒は我慢できる技を身につけましょう。
②聴き方のコツ5W1H
仕事の上で、メンバーから報告や連絡、相談を受ける時や、上司から目標や方針などの説明を受ける時などに、相手の話を、正確に受け止め理解する上で大切なのが、5W1Hです。さきほども一部ご紹介しましたが、5W1Hを使ってモレなく聴くことが良いと言われます。
5W1H法は、ご存じの通り
Who(だれが)
When(いつ)
Where(どこで)
What(なにを)
Why(なぜ)
How(どのように)
を指し示す言葉です。
こうした5W1Hが漏れなく相手から引き出せるようにしたいものです。ただし、5W1Hだけで聴くと警察の尋問みたいになるので、注意しましょう(^0^;)
③相手を知る(想定する)
相手が適切に話しをしてくれるとは限りません。メンバーの中には伝えることが苦手な人もいます。そのため、相手のコミュニケーションスタイルを想定してみるのも有効です。どのスタイルか仮説を立てて対応してみると良いでしょう。「違っていた」と感じたら、修正すればいいのです。
始めに、相手の話し方・聴き方の傾向からタイプを読み取っていきます。話し手の話し方と聴き方から、4つのどのタイプかを想定します。ヨコ軸話し方とタテ軸聴き方を、それぞれ論理的・感覚的に分けると4つに区分できます。
この分け方は、ハーマンモデルを参考にしています。対象者の考え方の癖や思考スタイルを知るための診断に応用されている方法です。
ハーマンモデルのメリットは5点です。
・シンプル&パワフル
・誰にでもわかりやすい
・多様かつ広範に活用可能
・科学的根拠に基づいており、妥当性が高い
・ワールドワイドな実績
こうした図を載せると「人はそんなに単純ではない。もっと複雑だ」とおしかりを受けます。もちろん、その通りです。心理学で用いるMBTIでは16通りに分類しています。それでも足りないでしょう。でも、たとえば16通りのどれに当たるかを会話中に分析するのは、至難の業です。心理学を専攻している専門家ならともかく、私には到底できません。せいぜい4通りがやっとです。また、それで大体はなんとかなっています。合っていないと思ったら、別のタイプに切り替えて会話を改めてトライしてみるだけです。
④自分の聴き方の癖を知る
無くて七癖というように、聴き手にも聴き方の癖があります。ありのままをそのまま聴くのは容易ではありません。
大きくは、3つの癖に気をつけます。反射、選択、湾曲です。
反射とは、自分の考えに合わない話をされたり、相手の話を聴きたいと思わない時に 相手の話の話は入ってこない状態になることです。心理的・時間的に余裕の無いときも相手の話が入ってこない状態になります。
選択とは、自分の興味のある部分や、相手が強調した時のみ、相手の話が入ってくるが、それ以外は聴いていない状態を言います。
湾曲は、相手の話を自分の都合の良いように勝手に解釈すること。または、相手の話 から別のことを思い浮かべている状態になることです。
自分にどんな癖があるかを知るのはなかなか難しいですが、会話を録音などして、会話中の自分が書いたメモと比べて見ると、大体は分かります。まあ、そんな面倒なことをするのも大変なので、仲の良い人や上司が相談しやすかったら、聴いてみるのが一番です。
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おわりに
論理的に聴く力について、整理してみました。
コーチングの先生に指導を受けた時、聴く力を高めるには、ポイントを理解した上で、実践して自分の力としていくしかないと言われました。
そういう意味では、ピアノや水泳を覚えるのと同じなんですね。実践しながらスキルを今後も高めていこうと思っています。
皆さんもぜひ、論理的に聴く力を実践しながら高めてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
こうした記事は、感情の読み取りの参考になるので、良かったらどうぞ
終わり