筋トレも科学の力を利用する
たくましい腕に憧れます。
割れた腹筋は美しい。
理系が、そうした体を手に入れる時は、原理・原則を押さえておきたいものです。
そんな体の筋肉のことを書いてみました。
興味を持たれたらご覧ください。
こちらは、ダイエットする上で知っておきたい体脂肪に関する記事です。
こちらは摂取エネルギーに関わる食事と運動のタイミングについての記事です。
1.筋肉は2ヵ月で入れ替わる
筋肉の種類
筋肉は、収縮する機能で動物の運動を担う器官です。
その筋肉は、機能によって3つの種類に分かれます。
平滑筋、骨格筋、心筋と呼ばれ、それぞれ筋線維 (筋細胞) の構造が違います。
ここでは、筋トレに関係する筋肉の骨格筋に注目して、その特徴を見ていきます。
まず筋トレの視点から注目したいのが、
筋肉細胞の入れ替わりのスピードです。
胃のような酸性の過酷な環境にいる細胞は2~7日で入れ替わります。けっこう早い。
一方、運動を司る骨格筋も日々合成と分解を繰り返していて、早い筋肉は2ヵ月くらいで新しい細胞に入れ替わっていきます。
新聞やTVなどの健康番組でよく聞く言葉ですね。
そして、骨格筋の入れ替わりが、早い筋肉で2ヵ月、遅い筋肉で7ヵ月ということは、
筋トレは、最低2ヵ月頑張ると筋肉が変わってくる
ということになります。
よく、宣伝で2週間で筋肉が変わるみたいなコピーは、こうした原理からすると、ちょっと信憑性が乏しいと思ってしまいます。
他、骨折などで入院して運動できないと、筋肉は1日3~5%で減っていくと言われているのもこの合成と分解から理解できます。
たんぱく質の合成と分解
筋肉の合成と分解を、たんぱく質(アミノ酸)から細かく観察してみます。
食事で摂った「たんぱく質」が吸収されて、筋肉などの合成と分解といった代謝に使われて、排泄するまでの流れを図にしてみました。
ポイントは、普段はたんぱく質の合成と分解はバランスしていると言う点です。
たんぱく質源であるステーキやお刺身を約350g食べると、70gのたんぱく質を摂取したことになります。(例:ステーキのたんぱく質量は約20%です)
その内55gが体内に吸収されて、15gは未吸収のまま排泄されます。
たんぱく質の吸収率は80%弱と高くありません。
エネルギー換算では約70%とさらに低くなります。
糖質などは95%と高い吸収率なので、差が大きいです。たんぱく質は、入れ替わりが早く、エネルギー効率の悪い栄養素なんですね。
なお、たんぱく質1gのカロリーが4kcalというのは、この吸収率や排泄分から決まっています。
参考までにたんぱく質と脂質、炭水化物の換算カロリー一覧を付けておきます。
さて、吸収されたたんぱく質は、一旦体内のアミノ酸プールに入ります。
アミノ酸プールとは、肝臓や血管に流れる血液中などの総称です。
こうしてプールされたアミノ酸は、
皮膚や内臓、髪の毛、筋肉の合成に利用されます。
とはいえ、プールされているアミノ酸の量は45gと多くありません。
そのため、人体は、体内で古くなった細胞のたんぱく質を分解して、そのアミノ酸も再利用しています。
その率は、なんと80%弱にもなります。
成人の場合、およそ240gのアミノ酸が日々合成と分解を繰り返しています。
再利用されているアミノ酸は185gにもなります。
この240gのアミノ酸合成の内、どのくらいが骨格筋の合成に占めるのかを調べてみましたが、文献が見つけられませんでした。残念です。
皮膚や髪の毛などもたんぱく質で出来ています。
個人差もあるでしょうが、自分で試算してみることにしました。
フェルミ推定を用いてみます。
注:フェルミ推定とは、捉え所の無い量を、限られた手がかりで論理的に短時間に推論する方法のこと
成人男性で体重60kgの標準体型の人を想定します。
成人のたんぱく質の総量を9000g(筋肉量だと45kg)とします。
(上図の体組織アミノ酸量を使用)
筋肉の入れ替わりが平均で2ヵ月で50%と仮定し、
9000×0.5÷60=75g から
日々240gのアミノ酸(たんぱく質)の内75g(約30%)が筋肉の入れ変わりに利用されているという概算が出来ます。
筋肉は、水分が80%、アミノ酸20%なので、
75÷0.8=375g
毎日約400g弱のどこかの筋肉が新しく生まれ変わっているという概算です。
たんぱく質不足で筋肉が細る
さて、普段の生活では、アミノ酸の合成と分解もバランスしている状態ですが、ダイエットなどで食事の制限をしてたんぱく質量が十分取れていないケースがあります。
こうしたケースでは、合成に必要なアミノ酸が不足するので、合成より分解が優勢となり筋肉が痩せていきます。
こうしたことから、ダイエット中でも、たんぱく質の補給を欠かさないことが推奨されています。
また、たんぱく質の合成には、糖質も必要です。かならず、たんぱく質と一緒に取るようにしましょう。
参照:ガッテン8月号p.12より
ダイエットで、総カロリー量が基礎代謝カロリーを下回るようなやり方をすると、摂取したタンパク質や自分の体のタンパク質を利用してエネルギー不足を補おうと働きます。無理なダイエットは、自分の筋肉を減らすことになります。注意したいですね。
ダイエットしながらの筋トレは、適度なカロリー制限と、筋トレ前後のプロテイン摂取が有効です。
タンパク質の摂取量
1日に摂るべきたんぱく質の量は、運動ごとにこんな数値になります。
たとえば、体重60kgの人が、筋トレ(増強)時に摂取するたんぱく質の量は、
MIN 60×1.6(g)=96gとなります。
肉や魚で摂る場合の量は、水分量が80%を考慮すると、約5倍の
480gとなります。
食材ごとの主なイメージはこんな感じです。
仮にサラダチキンだけでタンパク質を補給すると、1日5個程度食べないといけません。
毎食+運動前後も食べるという感じですかね。
ただ、サラダチキンで補給するとカロリーも109kcal×5=545kcal
分になるので気をつけましょう。
筋トレ時は、食事に加え、プロテインも摂取して総量をカバーすると良いでしょう。
必須アミノ酸-BCAA
筋肉には、自分の身体で生成できない食事でしか補えないタンパク質があります。
それを必須アミノ酸と言い約9種類あります。
その中でも特に重要なのがBCAAと呼ばれる必須アミノ酸です。
BCAAは、Branched-chain amino acidの略で、分岐鎖アミノ酸のことです。
R基という構造を持つ、バリン、ロイシン、イソロイシンになります。
食事では摂りにくいので、サプリメントとして摂取するのが効率的です。
2.筋肉を太くする
筋肉は超回復で肥大する
筋肉は、高負荷の運動をすることで肥大化します。
この時に「超回復」という仕組みを利用すると、効率的だと言われています。
筋トレで、強い負荷をかけると筋繊維が断裂します。(Bの状態)
すると、その部分の筋繊維が分解(Cの状態)して
アミノ酸として体内に還元されます。
その後、筋繊維が補強され太い筋肉になっていく次第です(Dの状態)
筋肉は、時間をかけなくとも各部位10回×3セットもやれば十分と言われています。
始めは1セットでも良いので5分程度から初めても十分効果があります。
また、同じ部位は、週2,3回の筋トレが超回復の面からはお薦めです。
傷んだ筋繊維が回復する間は、筋肉に負荷をかけないようにすることが有効です。
毎日筋トレしたい人は、日別に部位を変えましょう。
こうしたメニュー作りは、ネットに記事が沢山あるので調べてみてください。
筋肉再生は衛星細胞の働きから
骨格筋は、筋線維という多核の巨大細胞から構成されています。その大きさは、数センチから10センチ近くもあります。
その筋原線維には、単核の衛星細胞 (サテライト細胞) と呼ぶ幹細胞が点在しています。
筋線維1本あたり、数個〜数十個程度です。
この筋線維が、トレーニングなどで、断裂すると、幹細胞である衛星細胞の働きによって再生します。
この断裂部が、再生時に複数の筋原線維がついて太くなっていきます。
筋繊維の数は生後は分裂によって増えることはないと言われています。
つまり、筋肉に含まれている筋繊維の数は,生涯ほぼ一定です。
上の図でおわかりのように筋肉量の増加は,筋繊維の増加(太くなる)で実現できることになります。
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3.効率的な筋肉増強
白筋・赤筋・ピンク筋
筋トレをして、骨格筋の筋繊維を太くする訳ですが、筋トレで太くなるのは主に速筋(白い筋肉)と呼ばれる部分です。
骨格筋の筋肉には、遅筋と速筋、ピンク筋の3つのタイプがあります。
遅筋は、赤い筋肉とも呼ばれ、収縮力は弱いが持久力のある筋肉です。
持久力があるので、マラソン選手のような長時間の運動に適した筋肉です。
ただ、この筋肉は細くて強くなりにくい筋肉でもあります。
一方、速筋は、白い筋肉と呼ばれ、短時間に収縮する力が強い筋肉です。ただし、持久力はありません。筋トレで太くなりやすい筋肉です。
ピンク筋は、トレーニングで速筋が変化した筋肉のことです。
筋トレでは速筋をターゲットにトレーニングし、速筋やピンク筋を増やします。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
筋肉を太くする方法は、さきほど説明した超回復を利用するのでしたね。
さて、効率的に筋肉を太くするには、トレーニングする筋肉の優先順位があります。
自分が強化したい部位も加味して、効率的な運動メニューを作っていきましょう。
太い筋肉からトレーニングする
トレーニングは、大きな筋肉から鍛えるのが効率的です。上位10位までの筋肉はこちらになります。
参照:プロが教える筋肉に仕組み
4位以降には、速筋と遅筋の比率も示されています。
もっと筋肉を詳しく知りたい方は、こちらの書籍を参考にしてください。
一冊持っているとすごく便利です(^0^)
1位から5位をさらに詳しく見てみます。
筋肉名 筋体積量
1.大腿四頭筋(だいたいしとうきん) …1913c㎥
足の前面上部にある4つの頭筋の総称です。
(中間広筋、内側広筋、外側広筋、大腿直筋)
2.下腿三頭筋(かたいさんとうきん)…897c㎥
足の裏側の下にある筋肉のヒラメ筋と腓腹筋(ひふくきん)の総称です。
腓腹筋は「ふくらはぎ」のことです。
3.ハムストリング…897c㎥
足の裏側の上部にある3つの筋肉の総称です。
大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の3つです。
(だいたいにとうきん)(はんけんようきん)(はんまくようきん)
4.大殿筋(だいでんきん)…864c㎥
「おしりの筋肉」のことです。
「美尻」はここを鍛えます。
5.三角筋(さんかくきん)…792c㎥
肩を覆う筋肉です。上肢の中ではもっとも大きい筋肉です。
ここが大きいとアメリカンヒーローのようなたくましさがでます。
筋肉のマップ
筋肉の場所をまとめてみました。
大きな筋肉は、足やおしりといった下肢に集中しています。
上肢では、5位に三角筋が入ります。
6位が大胸筋です。
「シックスパック」と宣伝される腹筋(腹直筋)はランキングの下位です。
一番大きい腹直筋でも170c㎥の筋体積しかないありません。
腹筋は薄くて小さい筋肉の集まりです。
ダイエットのために基礎代謝を上げるには効果の少ない筋肉です。
とはいえ、割れた腹筋は、かっこいいですね。
お腹の横にある外腹斜筋を鍛えるとスマートに見えます。こうした筋肉は、メインとなる筋肉のトレーニングの合間に鍛えると効果的ですね。
5.まとめ
・筋肉は2ヵ月で入れ替わる
・たんぱく質が不足すると筋肉が細る
・筋肉を肥大させるには超回復
・筋トレ時はプロテインを多めに摂る
・必須アミノ酸-BCAAが大切
・太い筋肉順にトレーニング
こんな記事もご参考になれば幸いです。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
終わり