メディア利用時間
雑誌や新聞が売れなくなったと言われて久しいですが、テレビの視聴率も低迷しているようです。そして、YouTubeまで「オワコンか?」といった話題がネットで取り上げられていました。そこで、ライフサイクル理論から、自分なりの考察をしてみました。よろしかったらお付き合いください。
1.TVドラマ「明日への10カウント」を例に
個人的なお話ですみません。木曜日9時台のテレビ朝日のドラマをよく観ています。たとえば、この冬放送していた「ドクターX」のようなドラマが、仕事上でコーヒーブレイクの話題として役立つからです。
たとえば、こんな感じで利用させていただいています。
ちなみに前回2022年冬放送の「ドクターX」7シリーズは、平均視聴率16.5%でした。冬の視聴率No.1だったようです。
さて、今年4月からの木曜日9時は、木村拓哉さんが主演する「明日への10カウント」が6月9日まで全9話で放送されていました。
番組宣伝から
高校時代にボクシングで4冠達成したが、不運続きですっかり生きる希望を失った桐沢祥吾(木村拓哉)が、母校のボクシング部のコーチとして再起していく物語。キムタク初挑戦の学園スポーツドラマの反響は?
木村拓哉さんの出るドラマは、高視聴率をマークしているので話題になることが多いです。過去の出演番組の平均視聴率は、13~16%を記録しています。
ところが、「明日への10カウント」は出だしこそ11.8%でしたが、10%を割り込む放送回もあるなど低迷し、週刊誌が色々騒ぎ立てる状況にありました。
こちらが、各回の視聴率です。
参照:【未来への10カウント】の視聴率一覧!|【dorama9】
さすがに最終回は13.1%という好成績を残し、Twitterでも話題となり放送中にトレンド1位になったようです。トータルの平均視聴率も10.9%となりました。
とはいえ、これまでの視聴率からするとあまり良い結果とは言えないようです。しかも、視聴率が低かったのは木村さんが主演したドラマだけではないようです。
この春放送された番組の平均視聴率を観ると、もっとも高かったのが「マイファミリー」の12.5%で、「明日への10カウント」は10.9%で2位で、それ以外はすべて10%未満の状況です。今年の春のドラマは、全体的に視聴率が低かったという印象です。
こうしたテレビドラマの視聴率が低迷した原因には、リアルタイム計測方法や脚本、表現規制など色々な要素があるのでしょう。しかし、最近特に言われることの1つが、テレビというレガシーメディアから、YouTubeなどのネットコンテンツに人々の興味がシフトしているというものです。若者はテレビに興味を示さなくなっているという意見も多いです。そこで、その点を統計データから確認してみたいと思います。
2.TV・YouTubeなどの利用時間動向
こうしたテレビやYouTubeなどの動向を、総務省が出している「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」から観てみましょう。
こちらは、平日におけるTVとネット、それに動画再生(YouTubeなど)にどのくらいの時間を利用しているかを年度別の推移にしたものです。残念ながら、今時点では2020年のデータまでしか開示されていません。(テレビは録画視聴も含む)
この様子からは、TVの利用時間はここ7年横ばいです。
一方、ネットの利用時間が急進し、TVの利用時間に迫る所まで来ています。1番下の水色の線が動画ですが、2014年の6.7時間から2020年は38.7時間と約6倍の増加となっています。
こちらが、休日の推移です。
さすがにTVの利用時間が休日は多いものの、推移的には横ばいです。そして、ネットの利用と動画の時間がこちらも急進しています。このデータを観ると確かにYouTubeなどの動画コンテンツの利用時間が延びているのが分かりました。しかし、TVの視聴率が低迷している様子は見られません。
次は、年代別の利用時間を見てみます。
こちらは令和2年度の休日の年代別平均利用時間です。
ご覧の通り、テレビの利用率が1番高いのは60代の334.7分です。
一方1番低いのが10代で93.9分しかありません。約4分の1です(;゜ロ゜)
逆にネットの利用では、10代は290.8分ですが、60代は83.7分です。
ほぼ逆相関を描いています。
よく言われるように、テレビをもっとも観ているのは高齢者です。若者はネットを利用したコンテンツを多く観ているといえるでしょう。
ちなみに、ネットコンテンツの休日における平均利用時間の推移です。
2020年では動画が圧倒的で60分弱、以下、SNS、ブログと続きます。
このデータの調査概要を確認しておきましょう。
参照:令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書より
URL:総務省|情報通信政策研究所|情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
対象者は、13歳から69歳までの男女1,500人(計3,000人)
調査時期は、令和3年(2,021年)1月12日~1月18日となっています。
サンプル数は統計量として十分です。そして、期間は2021年の1月となっています。コロナウィルスの蔓延で緊急事態宣言が出ていた時期です。外出は控えられた時期になります。こうした時期だからYouTubeなどのコンテンツを観る機会が増えたことは予想できます。テレビも若干伸びたのはこの影響と思われます。
参考までに、コロナウィルスの新規感染者数の推移です。
資料:総務省データ:全国のコロナウイルス新規検査陽性者数より
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3.YouTubeオワコン?
最近、人気YouTuberの再生回数が低迷していると言った記事が散見されます。
たとえば、以下のような記事です。
TVがオワコンと言われるのはよく聞きますが、YouTubeがオワコンはピンと来ません。
さきほどご覧頂いた2020年の利用時間は伸びています。もう少し最近における、いくつかのデータを観てみましょう。主なコンテンツの利用者の推移です。
こちらは、最新の数値です。
データ:各社の公式発表資料や推定値から筆者が整理
もっとも利用者の多いのがLINEです。9,200万人(75%)もの人が使っています。コミュニケーションツールとして日本に定着している様子が覗えます。
そして、YouTubeが6900万人と約半数の日本人が利用している勘定になります。
一方、Twitterは4,500万人で克つ最近データが開示されていません。たぶん、かなり減少している可能性があります。Facebookも2019年以降開示されなくなりました。
TwitterやFacebookは利用者が減少していると想像するのが妥当でしょう。こうしたコンテンツは、新しいツールに移り変わるのが早いですね。たとえば、新興勢力である「TikTok」は利用者を拡大しているようです。こうした点をYouTubeは、利用し「TikTok」と相乗りしています。
最後に、コンテンツ(媒体)別の広告費用に推移を観てみましょう。
インターネット広告が、2019年に地上波テレビを抜いています。
テレビは、2009年のリーマンショックで急減し、幾分持ち直しましたが、このコロナ禍でまた減少しました。2021年は2019年のレベルに回復している状態ですが、長期低迷は避けられないでしょう。最近、テレビ番組の予算が不足しているといった記事が出るのはこうした点があるのでしょう。
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4.ライフサイクルで観てみる
ライフサイクルとは、世の中の製品やサービスが、誕生してから成長して衰退して消滅するまでの様子を放物線で描いた曲線です。このライフサイクルの曲線上に、これまでご覧頂いたデータを元に、各コンテンツの現在の位置付けを、私の推測で当てはめてみたのが以下の図です。
テレビは、成熟期が終わり、衰退期に入っていると想定しました。
この段階の特徴は利用者の減少です。そして基本的な戦略は選択です。テレビ局がネット配信に軸足を移しているのはこうした点からも理解できます。
では、YouTubeはどうでしょう。いまだに利用者が増加していますし、利用時間も延びています。広告費も増加していました。テレビの視聴時間を喰うチャレンジャーの戦略も可能なので、成長期と判断しました。ただ、この時期は、競争者が急速に増える段階です。有名人などが相次いで参入しているそうです。これから、かなりの乱戦状態になるでしょう。これから参入する方は、この競争状態に勝たなければなりません。大変だろうと思います。とはいえ、差別化された良質なコンテンツを提供できれば利用者を拡大できる可能性もあります。
一方、ネットコンテンツは入れ替わりが激しいので、その点はよく考えないといけないかもしれません。
5.おわりに
自分の観ているTVドラマの視聴率が低迷していることを題材に、徒然に書いてみました。
コロナ禍が収束する中で、旅行や外に出て行く人も増えてきたようです。こうした人々の行動の変化がどう影響するか興味津々です。
さて、私の好きだった時間帯のテレビ朝日8時台のドラマ枠は7月期で終了するようです。寂しいですね。視聴者の若返りを図るなど狙いがあるようですが、実際はお金のかかるドラマを作る力がないのではと勘ぐってしまいます。
たぶん8月頃に新しい統計データが出るので、また分析してみたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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終わり