AIの進歩
新しいことをする上で、一次情報の入手は欠かせません。一次情報とは自分で動いて得た情報のことです。情報の鮮度が高く、オリジナリティーも高いので、企画などの新しいことを考える上では必須の情報です。
一方で、AIの発達で一次情報も画像さえあれば入手が出来るようになってきました。インターネットの発達で、三次情報の入手が容易になったようにです。今日はそんな一次情報の今と未来を通行量調査を例に確認していきます。
1.一次情報の位置づけ
始めに一次情報の位置づけを確認しておきましょう。主に3つの階層に分けられます。
(ご存じの方は読み飛ばしてください)
一次情報とは、
自分が体験した生の知見や、自分で収集した生データやアンケート情報などです。自分で直接得た情報なので、具体性が高く鮮度も高い情報です。一方で情報収集には限りがあるので、限定的な狭い範囲の情報になります。
マーケティングや企画、研究している方には喉から手が出るほどほしい情報です。
画像:写真ACフリー素材より
二次情報とは、
一次情報を持つ他人から得ることのできた情報です。多くは、一次情報を加工して作成した図や表などになります。加工されているので、分かりやいですが、その分情報やデータの具体性は劣化します。
しかし、人脈などの人を介した生情報は、「ここだけの話」と言った非公開情報が多い事や、自分の行動範囲外から得られるため貴重な情報源となります。
こうした情報をメタ情報という言い方もします。(注:メタは、高次の意味)
画像:写真ACフリー素材より
三次情報とは、
主に書籍や論文、ブログやYouTubeなどネットの情報など誰でも入手可能な情報です。誰かの意見や主張としてまとめた情報で、一般的には、二次情報をさらに加工した情報です。多くの情報を要約しているので、視野の広い情報ですが、鮮度は低めです。
何かを行う前提の知識として学ぶ上などには欠かせない情報になります。
二次情報(メタ情報)をメタ化しているので、メタ・メタ情報と言えます(^_^;)
真偽がはっきりしていない情報も多いのでメタメタ…(^_^;)
情報力については、こんな記事も書いています。
冗談はさておき、
日本は、未だFAXが盛んに利用されるくらいデジタル化の後進国ですが、それでも情報のデジタル化が進み、公式な統計数値は簡単に入手できるようになりました。
統計局のURL
世の中に出回る情報量が増え、入手が簡単になるほど、情報選択の重要性が高まっています。なので不確かな高次な情報を選択する上で、自分で観察した一次情報が重要になっています。
では、具体的な一次情報収集の今を確認してみましょう。
ここでは、販売やマーケティングで必須となる通行量調査を事例に見ていきます。
2.通行量の調査の現状
私が診断士として商店街診断したときの通行量調査の様子をご紹介します。
事例は、東京江東区の砂町銀座商店街のものです。同時に三次情報も確認してみます。
始めに、砂町銀座商店街の概要を三次情報から確認してみましょう。こちらが砂町銀座商店街の入り口の画像です。昔ながらの昭和の雰囲気が感じられます。
引用先:砂町銀座HPから
検索で見つけた商店街の概要です。
砂町銀座商店街
江東区北砂に位置し、明治通りと丸八通りを東西に結んで全長約670メートル、180店を超える店舗で構成しています。
始まりは定かではありませんが、戦前には30店ほどが営業していたと言われており、1945年に全ての商店が強制疎開、同年の東京大空襲で焦土と化しました。
戦後、復興ともに店舗も増え始め、1963年頃には、ほぼ現在の商店街と同じ180店が軒を連ね、明治通りと丸八通りを結ぶ全長670メートルとなりました。
雰囲気は、今もなお昭和のムード漂う風情ある商店街といった感じで、地域に根差した個人商店が中心です。1日の来訪者数は平日で約15,000人、休日には約20,000人に至ります。
引用先URL:
東京の活気ある3つの商店街 「三大銀座」とは? その魅力に迫る! - 不動産投資スクエア
不動産会社のHPからですが、概要が分かりやすくまとまっています。さすが空き店舗の販売を手がけているだけのことはあります。
今日の通行量調査のヒントになる通行量が書かれています。
1日の来訪者数は平日で約15,000人、休日には約20,000人に至ります。
次は、商店街のマップを見てみましょう。概要に書かれていた通り、個人商店が多く並ぶ様子がわかります。
引用先:砂町銀座HPから
さて、砂町銀座をグーグルマップで検索するとこんな情報が得られます。
引用:グーグルマップ
砂町銀座の様な観光地は、通行量が「混雑する時間帯」というグラフで得られます。スマホのGPSデータから作成していると書いてありました。ただ、通行量の絶対値は書かれていません。
ここまでご覧頂いて分かるように、三次情報では、砂町銀座商店街のような有名な場所でも検討に利用できそうな具体的な通行量データは得られません。
実際の通行量調査の状況
そこで、具体的な通行量調査をしてデータを取ることになります。その様子をご紹介します。
私が行った通行量調査は、お店が開く10時から日が暮れる18時までの8時間を調べました。調査前の朝9時の商店街の様子はこんな感じでした。お店はほとんど開いておらず、人通りもまばらでした。
調査地点は、東西両側の入り口と、中2カ所の計4カ所になります。
この4地点データで人の流れも推定できます。
通行量調査は、指定目印の前を通りすぎた人を左右それぞれにカウントしていきます。使うカウンターは5連のものを、左用と右用の2台で集計します。
集計したカウントを1時間ごとに記録していきます。
作業中の様子はこんな感じです。アナログ感満載ですね(⌒-⌒; )
カウント作業は、慣れないと大変です。
たとえば、それぞれ自転車に乗った夫婦らしい男女の高齢者が通ると6回各カウンターを押すことになります。以下がその概要です。
こうしたカウントを、交差点近くで行うと人の流れに波が出来ます。多いときは10数人が一度にやってきます。この人たちを目視で、年齢と性別をすばやく推定しカウンターを押していくことになります。高齢者の基準は65歳以上となっていますが、あの人は何才だろうと悩んだらアウトです(^◇^;)間に合わなくなります。なので、スキルというか経験がモノを言います。
この時は通行量と同時に、来街者へのアンケートも行い生の声も収集しました。
こうして通行量やリアルな声を、生情報(一次情報)として得ることができます。
その後、たとえば通行量をグラフ化し二次情報を作成していきます。これは通行量のグラフの一部です。色々なグラフを作り提言に役立ちそうなものを掲載します。
ただ、こうしたグラフだけでは、その時々の来街者の動きや心情は読み取れないので、そこをアンケートや実際に観察した自分の主観も加えてまとめることになります。
今回の収集では、日曜日に通行する人は、23,902人と分かりました。
三次情報では、休日は約20,000人とありましたが、それより多い結果でした。しかも、男女比や年齢区分別などのより具体的なデータを得られることになります。
この時の調査は、4地点で延べ10人による調査でした。通行量調査が4人、アンケート4人、休憩2人が1時間のタイムシフトで8時間作業をしていきます。おおむね3時間に一度の休憩で、トイレと食事もその時間内に行います。
一次情報の収集はけっこう大変な様子が多少は伝わると良いのですが…(^_^;)
3.AIの進歩で一次情報の収集も変わる?
AIの進歩はめざましいものがあります。
今回の通行量調査を動画の解析で行うサービスが出てきました。
こちらがそのサンプル映像です。
引用先:SCORE
詳細を知りたい方の為にURLをつけておきます。
この会社の紹介文を引用します。
映像データをAIアルゴリズムで解析し、車両交通量や歩行者通行量を高精度に計測できるサービスです。動画をアップロードし、計測したい地点へブラウザ上で検知線を設定することで、解析結果の動画とログが簡単にダウンロードできます。また、車両や歩行者の通行数だけでなく、車両の種別や歩行者の属性なども推定可能です。
自治体が実施する交通量調査や通行量調査だけでなく、新規出店に向けた交通量調査や、イベントの来場数のカウント等にもご利用頂けます。
HD以上の解像度で録画した動画映像があれば、ほぼ録画時間の再生後に集計結果が得られるそうです。精度も人のと比べても誤差は1%以下と書かれていました。費用も意外とお手頃価格です。
ただ、現状は、人や自転車、車程度の分類しか対応していません。男女や年齢別の集計は出来ないようです。
しかし、画像さえ高精度なら、年齢や性別を判定するAIはすでに存在します。
しかも、表情さえ分析します。
引用先:User LOcal
URL:
今後、より高精細度の動画が収集可能になれば、人を超える高度な一次情報提供のサービスが出てくることでしょう。販売の現場で活用される時代も近いと感じています。
かつて、三次情報の収集に国立国会図書館に通い詰めたことがあります。往復4時間かけて目的の書籍などのコピーを有料でしてもらっていました。時間もお金もけっこうかかりました。それが、今はほぼ同等のデータが、自宅でネットを使って収集可能です。
一次情報の収集も、そう遠くない未来に、簡単にできる時代が来るのでしょう。
4.おわりに
一次情報の収集は、貴重ですが現状はかなりの労力・お金・スキルが求められます。
しかし、AIの発達がこうした一次情報の収集を容易にする可能性が出てきました。
この変化で、私たちはどんなスキルが求められるか見極めておく必要があります。
個人的には、「情報を評価する力」ではないかと推察しています。
新しい技術を試しながら、検証していきたいと考えています。
こんな長文の記事を、最後まで読んでいただきありがとうございました。
終わり
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