スキルの習得
最近、BabyStepsというテニス漫画に、はまっています(^_^;)。せっかくなのでスキルの学び方を、テニスを題材に形式知(ツボ)と暗黙知(コツ)から整理してみたいと思います。
興味を持たれたら、おつきあいください。
こんな記事も書いています。
1.BabyStepsより
テニスの熱血スポーツ漫画でBabyStepsをご存じでしょうか?私はこの漫画に、今はまっています。AmazonのKindleなどで再読しています。実は昔、全47巻を単行本で読んでいます。今回は、リピートです。(残念、本は売ってしまいました(^_^;))
紹介文からの概要です。
マジメ少年+美少女×テニス=熱血スポコン!? ――成績はずっとオールA! 几帳面でマジメな“エーちゃん”が、ちょっぴりいい加減!? でも、テニスに懸ける情熱だけはマジメな美少女“ナツ”と出会ったことで、テニスの魅力に取りつかれて人生激変!? 快感、そして悶絶のらせん……。数式じゃ表せない、衝撃的な人生の化学変化が始まった!!
このエーちゃんは、高校1年生からテニスを始めた遅咲きの主人公という設定です。勉強が出来てオールAなので「エーちゃん」と呼ばれています。同級生のナツに誘われて、テニスを始めました。やり始めたらテニスに魅了されていきます。そして、その几帳面さから試合中でも相手の特徴やラリーの様子をノートに記録しています。そうした情報分析の力を活用して試合を有利に展開していくのが壮観です。とはいえ、テニスは経験値も必要なので、ハードな練習にも明け暮れながら強くなっていく姿も描いています。スポーツは練習が大事ですね~(^_^;)
漫画の1コマから
出典:エーちゃんがノートに書く所と基礎トレーニングのシーン:BabyStepsより
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2.テニスのツボとコツ
テニスは、ラケットでボールを打ちあう物理法則の集合体のようなスポーツです。つまり、理論をしっかり学ぶ形式知(ツボ)が重要です。しかも、ボール軌道を変化させる多彩な打ち方も身につけなければなりません。なので、テニスは打ち方の形式知(ツボ)と、その打ち方を身体で覚える経験の暗黙知(コツ)の総合技能といえます。
再度、漫画の1コマからリターンのボール軌道を描いたシーンです。
出典:アニメBabyStepsより
漫画からおわかりのように、トップスピンは山なりに、バックスピンは低く滑るように描かれています。
トップスピンやバックスピン、フラットボールの軌道は横から見るとこんな感じです。
トップスピンは、ボールに巡回転がかかっているので、山なりのコースを描きます。跳ねるので返すのが大変です。(注:高さと奥行きは5倍の比になっています)
一方、バックスピンは、逆回転なので低い弾道でボールが滑るように飛びます。腰を落としてしっかりリターンしなければなりません。
ちなみにバックスピンはスライスとも言います。横回転も加わると変幻自在に軌道が変化します。
テニスにおけるボールの打ち方は多彩ですね~。
さて、打ち方を図で描くとこんな感じです。
初心者が最初に覚えるフラットボールのラケット軌道は、ボールに対してまっすぐに打ち出します。
一方、トップスピンをかけるには、ボールをこする必要があるので少し伏せたラケットを強く前に振り出します。なので、トップスピンのボールは初心者には難しい打ち方になります。
YouTubeから、錦織圭さんのトップスピンを打つ映像を見つけたので添付しました。
57秒ほどの映像なので、お時間のある方はご覧ください。
上図の理論(形式知)を知った上なら、この錦織さんのラケットの動きがご理解いただけると思います。
引用元:テニス動画.com
URL: テニス動画 l Youtubeテニス動画まとめ
こちらは、トップスピンボールのシミュレーション軌道図です。打つ角度(打角)で届く距離の違いが正確に描かれています。本のコピーが、見にくくてすみません。
出典:テニスの科学p.142より
ベースライン上で、高さ90cmから、初速25m/秒(時速にすると90km)で、トップスピンをかけたボールの軌道です。高さと奥行きの比が5倍になっていますのでご注意ください。実際はもっとシャープな軌道になります。
打つ角度(打角)によって落下点が図のように変化します。
打角10度だと、サービスライン付近(真ん中辺り)に落下します。
一方、打角20度だと、ベースライン近く(コートギリギリ)に落下することになります。
こうしてボールの打角を変えることで前後に振ることが出来ます。
この図はテニスの科学という本に掲載されていたものをお借りしました。著者は東京大学の三浦教授と横浜国立大学の蝶間林助教授です。(当時)1980年と古い本ですが、三浦さんは「ミウラ折り地図」で有名な方です。
これを読んだとき、テニスは正に物理法則から成り立っていると実感したものです。BabyStepsはこうした書籍を参考にしているのではと思ってしまう内容です。
さて、打ち方の知識を得ても訓練してそれを身体で覚えないと使えません。
テニスが形式知(ツボ)と暗黙知(コツ)の両方を学ぶことで上達することが、この漫画から改めて学べました。BabySepSが私を魅了したのは、こうした点からでしょう。
再び、漫画の1コマから
出典:アニメBabyStepsより
打った感覚とどこに落ちたかの認識の2つの備わった確かな1球を打つことで上達する。その数が多いだけコントロール精度が向上する。
深い言葉ですね( ^o^)
3.形式知と暗黙知
ここからは、やや固いお話です。オマケみたいなものです。
お忙しいかたは、読み飛ばしてくださって結構です。
さて、形式知(ツボ)と暗黙知(コツ)を氷山モデルで考えてみましょう。
ご存じのように氷山は全体の8%程度が海面から顔を出して浮かんでいます。
この海面から出て部分が、形式知となります。
言葉やデータ(数字)・記号で、客観的に伝えることが可能な知識を言います。
形式知の例です。
数字や文字情報は形式知として分かりやすいですが、たとえば、音楽の楽譜も形式知です。また、数学の公式なども形式知となります。
このほか、芸術における1点透視図法といった遠近法や黄金比といった知識も形式知といえるでしょう。
一方、海面下の氷が、暗黙知となります。
海面に隠れているので内容を知ることことが難しい部分です。多くは個人や一部の集団の主観的な知識となります。
ゲームで刀剣乱舞というオンラインゲームが流行っているそうですが、その中で刀を作るシーンも出てきます。こうした刀作りの職人を刀匠といいます。
日本における刀作りは1000年の歴史があるそうです。その世界で伝承された技術は金属工学という形式知にも残されますが、細かいニュアンスは言葉などでは伝わらないと言われています。いわゆる徒弟制度で弟子が師匠の背中を見て学び伝承していく暗黙知となります。
神社などを作る宮大工の世界も同様です。師匠のかんなくずを見本にもらって出来るようになれ。といった指導の仕方です。
パン職人の世界も、技術が暗黙知化されている例が多いと言われます。
そのパン作りの暗黙知を形式知に変えて大ヒットしたのが、パナソニックの家庭用自動パン焼き器「ホームベーカリー」です。パン生地を錬るコツを「ひねり伸ばし」という形式知に変えて製品化に成功したものです。
今、高齢者の大量退職による暗黙知の喪失が、製造業の課題となっているのは興味深い問題です。
そうしたニーズを、AIを活用し暗黙知の記録技術もビジネスになろうとしています。
引用:MONOist
今後の暗黙知に関わる技術の動向は見逃せないものがあります。
4.終わりに
スキルを学ぶ上では、基本的な技術を形式知知識として学び、知ったうえで訓練で身につけていくことが必要です。
こうした知ってわかる知識を形式知「ツボ」といいます。形式知「ツボ」は伝えることが出来る知識です。
一方、学んだことを経験値を高めるのは試行錯誤し身体で覚えるしかないものです。これを暗黙知「コツ」と言います。
私たちは、形式知「ツボ」を求めがちです。でも、その形式知「ツボ」を利用できるようになる暗黙知「コツ」にも留意することが、スキルを上達させる上で大切なポイントです。
また、AIの進化は暗黙知の学び方を変える可能性があります。その動向はよく観察する必要かあると感じています。
漫画を例にした割りには、固い記事になってしまいました。すみません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
終わり