問題
問題解決を進める上で、もっとも大切な部分は問題を発生させている背景についての理解です。しかし、その割には、そうした啓発本にも具体的に説明をしているものは少ないです。そこで、改めて整理してみました。お時間があったらお付き合いください。
作成 2017年3月3日 更新 2024年6月20日
問題とは?
問題は、「あるべき姿」と「現状」のギャップ(差)
です。
たとえば、営業部隊の売上未達を例に見てみましょう。
あるべき姿と現状のギャップの差「売上が1.9億円未達」が問題となります。
もう少し他の事例もご覧いただきます。
こちらは、製造工程での問題の例です。
工程の不良があるべき姿より、90件多いことが問題です。
さて、これらのギャップ(問題)は、活動のある時点の結果を表しています。
しかし。ある時点の結果である問題(ギャップ)は分かっても、これだけでは問題解決は進められません。
そこで、問題が発生した背景を理解する必要があります。
問題発生の背景
問題発生の背景は、以下の要素から考えると良いと言われています。
要素は4つです。
①活動の基準(計画や勘)
②活動の事実(活動実績)
③制約条件(前提)
④予期せぬ事象(想定外)
こうした要素について、情報収集して分析していくと背景が理解しやすくなります。
たとえば、先ほどの「売上が未達」の例で確認してみましょう。
こちらの左の表が、
①活動の基準となる期初計画と、
②活動の事実
を表にしたものです。
このデータから、差異分析をしていくと、
右の図のように、A社の販売数が計画より100,000個少なかったことによるマイナスが、200万円になっています。
そのほかは、おおむね計画通りです。
未達の主な要因は、「A社に対する販売数数が不足したこと」と理解できます。
それをグラフで見える化するとこうなります。
A社の販売数の未達が、主な要因であることが視覚的にもはっきりしました。
さらに要因を分解してみましょう。
売上は、販売数×価格×期間と因数分解できます。このように分解しながらロジックツリーでまとめたのがこちらです。
活動の根拠(計画)からの背景は、
・A社の販売計画の立て方は適切だったのか?
・進捗管理のルールに問題はなかったのか?
の2点です。
計画や運営のルールに関することが問題の背景として浮かんできました。
活動の事実から浮かぶ背景は、
・B社に拡販の余地はなかったのか?
です。
次に、制約条件から、推察してみましょう。
・A社への価格をさらに下げたらもっと売れたのか?
・B社への価格をさげたら、さらに売れたのか?
販売価格のしばりなどの、ルールに問題がなかったか背景を確認する必要がありそうです。
想定外の事象では、
・A社への価格対応は適切に行えたのか?
A社からの値引き要求が、想定以上に厳しかったようです。その状況を予測できなかったかを振り返る必要があるでしょう。
このように問題発生の背景をできるだけ抽出していくことで、さらに分析して取り組むべき事を明らかにしておくと、次回の計画作りや活動に反映しやすくなります。
製造工程の不良が多い場合は、定量化しやすいので、こうしたパレート図を作ると、どうような背景があるか、要因がみつけやすくなります。
こちらの要因分析の詳細は、省略します。
皆さんでやってみてください。
背景がわからない…そんな部分は、あなたなりの推測を入れてもいいでしょう。
仕事のプロが行う「当りをつける」ことの練習にもなります。
トゥールミンモデルとは
こうした4つの要素が問題発生の要素となる根拠は、トゥールミン・モデルが参考になります。
物事を論理的に考察していく上で、これらの要素が要件となっています。
詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
さて、
こうした「活動の理由」や「活動の事実」、「制約条件」、「想定外の事象」は、すべてが既知な情報ばかりではありません。
未確認の情報や不完全な情報となっている部分があります。
こうした未知の情報を含めてブラックボックス化している問題発生の背景を明らかにしていくことが問題解決の一歩です。
見えている部分は、全体の8%くらいしかないという説もあります。ちょうど氷山の見えている部分が全体の8%くらいしかないという説から名付けられています。
こちらの記事で詳しく解説しています。
おわりに
問題解決においては、問題を把握することが大切ですが、その問題が発生した背景を知ることも重要です。
ぜひ、こうした知識も活かして問題解決に取り組んでみましょう。
①問題発生の背景となる4つの要素の情報を集める
②収集できた要素を論理図にまとめる
③把握した要素の裏付けを取る
⑤影響の大きそうな要素から問題解決の優先順位を付ける
今回は、久しぶりに問題解決といった硬い記事をリライトしてみました。
最後までお読みいただきありがとうございました。