論理的思考法
問題解決を行うときに、MECEを活用すると、アイデアが出しやすく、問題原因のヌケやモレを減らすことが出来ます。一方でMECEは、ほどほどにという利用の限界も知っておく必要があります。そんなMECEのコツやノウハウなどを図解を使って例を交えてお伝えします。興味を持たれたらお付き合いください。
この記事は、2019年7月の再編集したものです。タイトルはAIアシストを利用してみました。
1.今の時代だからMECEを利用しよう
コロナ禍後、これまでの社会的な枠組みが大きく変化し身の回りにも影響が出ています。テレワークの推進、円安進行による物価高騰、インボイス制度の導入など、自身の防衛のために解決しないといけない問題が次々と発生しています。
問題解決を、手っ取り早くWeb検索で見つけるという方法あるでしょう。
それも悪くはないです。職場や自分の問題にマッチした解決事例が見つかれば、それを実行するのが一番手取り早いです。でも、自分の問題にぴったりの解決案は早々見つかるものではありません。
そんな時は、やはり自分で考えるしかありません。しかも、職場の問題は、色々な要素が複雑に絡み合っていることが多いものです。
そんな問題の解決には、ロジカルシンキング=論理的思考が有効です。
解決すべき問題を展開・分解し、自分が解決しやすい大きさにして、事例を参考にしやすくしたり、自ら考えやすいレベルにすることが大切です。
そうした分解や展開を助けてくれる思考法の1つが、MECEです。
では、MECEの使い方や限界を確認していきましょう。
2.MECEは物事を論理的に分解する手法
MECE(ミーシーと読みます)とは、取り組みたい対象をダブリなく、モレなく分類する手法です。4つの英文字の頭文字からMECEと呼ばれています。
Mutually(それそれが)
Exclusive(ダブリなく)
Collectively(全体的に)
Exhaustive(モレがない)
いくつかMECEの事例を見てみましょう。
始めに分かりやすいじゃんけんの事例で確認していきましょう。
じゃんけんは、グーとチョキとパーを出して勝負を決めるのがルールですね。
なので、完全なMECEとなります。
勝負としての利用法は明確ですが、この例から問題解決の意味を見いだすのは難しそうです。
では、実際の例から考えてみましょう。
これは、衣料品のマーケティング戦略を考え時にお客様を分けてみたものです。
児童・学生
主夫・主婦
OL・ビジネスマン(死語ですね(^0^;))
年金生活者(私だ!)
では、MECEで図解してみましょう。
一見問題なさそうに見えます。
しかし、
「私は働いている主婦(主夫)ですが…」
この図解したMOCEでは、複数の分類に重なる人が説明できません。
働いている主婦は、
主婦であるとともに、OLでもあります。
これがダブリです。
そして、
たとえば、個人で事業している人。
この個人事業主、図解には含まれていません。
モレとなります。
このようにMECEを意識して作ったつもりでも、
モレやダブリが存在してしまうケースがあります。
こうしたモレは、
ビジネス上で、貴重なお客様ターゲットを見逃す原因になります。
またダブリは、
作業が重複するのでロスが発生する可能性が出てきます。
MECEを作る上では、こうしたモレやダブリを少なくする必要があります。
3.MECEの作成のコツ
では、できるだけダブリやモレがなく、
かつ意味のあるMECEの
展開・分解するコツを確認してみましょう。
次の4ステップで確認していきます。
Step 1 :
取り組む全体の大きさを決める
Step 2 :
MECEの軸を探す
Step 3 :
MECEに分ける切り口を深める
Step 4 :
全体を見渡してモレとダブリを点検
言葉としては簡潔ですが、大きさを決める?軸を探す?難しそうな印象を受けますね。一つ一つ確認していきましょう。
Step 1 : 取り組む全体の大きさを考える
大きさを考える場合、地図を例にすると分かりやすいです。
たとえば、ある調査をするとして、
あなたが問題解決したい検討の対象は、どの程度か見積もることを「大きさを考える」と言います。
たとえば、
日本全体とするか
あるいは東京都に絞るか
さらに千代田区まで絞るか
もっと絞って担当エリアで行うか
を決めるのが「大きさを考える」ことです。
この「大きさを考える」時のポイントは、絞るほど、問題の展開や分解のは深さが出しやすくなります。
地図で見ると、日本全体より→東京都→千代田区といった具合です。
もう1つ「大きさを考える」のコツを見ていきましょう。
たとえば、利益改善を考える上で、
経営者の考える大きさと
実務担当者の巻上げる大きさは、
異なります。
問題解決は、自身の身の丈にあった大きさで思考することです。
切り口となる「大きさ」をよく考えて、分析の範囲をきちんと定義してみましょう。
Step 2 : MECEの軸を探す
大きさ(切り口)を決めたら、展開・分解の軸を決めていきます。
軸とは、思考の基準となるもの、前提条件です。
よく「軸をはっきりさせる」というあの軸です。
この軸を決める方法は、色々あります。
例をご覧ください。
地理的変数(ジオグラフィック変数)を使う
先ほどの地図のような分け方です。
国別・都道府県別・都市の規模、経済の発展度、人口の大小、気候、文化・生活習慣、宗教、などの要素で分類することを地理的変数と言います。
グラフなどでは、都道府県別を軸にした例がよく出てきます。
URL: 新型コロナウイルス 国内感染の状況
この例では、コロナウイルス感染者数を都道府県別に地理的変数で分解しています。
自分の住む地域に関心を持ってほしい場合などでポイントが分かりやすくなります。
人口動態変数(デモグラフィック変数)を使う
年齢、性別、職業、所得、学歴、家族構成などの要素を軸にして分類することを人口動態変数と言います。
人口動態変数は、消費行動との相関性が強く、色々な統計データが入手しやすいので、よく使用される変数です。
ただし、人口動態変数だけでは、単に分けただけとなる可能性があるので、別の要素と組み合わせて意味づけする必要があります。
この例は、資産保有の人口構成比と正味資産割合でグラフ化したものです。
パレート分析ともいいます。
わずか5%の富裕層が富の62%を持っていることがわかります。
時系列やフローを使う
時系列では、たとえば問題解決のステップであるPDCAサイクルで分けていきます。
PDCAサイクルは、事象や対象を
Plan(計画)
Do(実行)
Check(評価)
Action(改善)
で分類します。
サプライチェーンなどの仕入れから流通、販売までの時系列を利用する方法です。
この5つの要素を弁解の切り口に応用します。
・仕入れ
・材料
・加工
・物流
・販売
と分類することで、問題解決する対象をヌケ、モレが少なく検討ができます。
因数分解(かけ算)して考える
たとえば、
売上は、単価×売上数といったようにかけ算で求められます。
こうした因数分解を経営分析などはよく利用します。かけ算や足し算、引き算など各要素の相互関係を式で考えることで分解しやすくなります。
対立項で二つに分ける
対立項とは、
・「ある」「ない」
・「好き」「嫌い」
・「無料」「有料」
といった正反対の意味を持つ言葉で分けることを言います。
この方法は、対立する基準を用いるのでダブルことがありません。
分解の始めに利用して、まず全体を2つに分けて見るには、とても便利な方法です。
対立項の事例はこの後ご紹介します。
Step 3 : MECEに分ける切り口を深める
フレームワークと軸を利用する方法をご紹介します。
フレームワークを用いる
フレームワークとは、物事や思考を整理する際の「枠組み」のことを言います。
先人の知恵をセオリーとして集約したものになります。
たとえば、マーケティングで用いる4Pや3C、ロジックツリーなどがあります。
こうしたフレームワークは、これまでに紹介した軸や変数ではなかなな出てこない内容なので、上手に使うとモレのない検討が出来ます。
2つ以上の軸を組み合わせてみる
1つの軸ではなく、2つの軸を組み合わせて利用すると分解を深められます。
たとえば、対立項などの正反対の意味をもつ言葉を1つの軸にして、もう一つ別の分解要素を利用して分解を深める方法です。
実際に、これまでの軸や切り口のヒントを使って分解をしてみましょう。
題材は、みなさんも関わることが多い
「市町村が回収する家庭ゴミ」です。
最初に分類しやすいように対立項を用いています。
対立項は、「資源ゴミ」か「資源ゴミ以外」としています。
資源ゴミ以外は、その下の分解を
「燃える」「燃えない」の対立項で書いています。
一方、資源ゴミは
リサイクルの材質基準と別の軸を用いています。
なんとなくうまく出来ていそうですね……
この分類をロジックツリーで書いてみたのがこちらです。論理的に見える化できた感じがします。
では、再度点検してみましょう。
Step 4 : 全体を見渡してモレとダブリを点検
でも、何か気付くことはありませんか?
そうです。
資源ゴミの分類に一部「モレ」がありました。
そこに気づいたあなたは資源管理の意識が高くMECEのセンスがあります。
たとえば、衣類や廃食油です。
それから、粗大ゴミもありますね。
机とか家具といった大きなものです。
市町村で大きさの基準は異なるようです。
おそらく焼却炉などの設備の都合でしょう。
私の住む町は、50cm以上が粗大ゴミ扱いになっています。
では、追加してみます。
追加した粗大ゴミから、上位に、対立項の「無料」か「有料」の分類が入りました。
こちらも、ロジックツリーで書いてみます。
ゴミには、分類が難しいものが多いです。
たとえば、衣類は資源ゴミとしましたが、燃えるゴミとしても出せます。
これらは、汚れ具合や、個人の意識の違いでも変わってきます。
こうした「ダブリ」の要素をどう扱うかは難しい問題です。
4.MECEの限界
ゴミの分類で、厳密なMECEを作ることは難しい一端を示しました。
こうした点がMECEの限界です。
厳密なMECEにする必要はないが。MECE感が大事くらいに思うことが大切だそうです。
たとえば、人生のライフサイクルを、人口統計学的変数(デモグラフィック変数)を用いて区分すれば、MECEになります。
しかし、たとえば「老年期」という分類が、ビジネス上どのくらい意味があるでしょうか。一般に老年期は65歳以降を指します。では、65歳の誕生日を境として消費行動が変わるかというと、そんなことはほとんどありません。
このように論理的にMECEに出来たらといって、ビジネス的にどれだけ意味があるかは微妙です。
一方、消費行動としての「壮年期」の分類には、収入損益曲線の軸から、収入が多い時期であることがうかがえます。
「壮年期の働く女性に対して、機能性の高い高級化粧品のアプローチをしてみよう」というようなヒントを得ることには有効です。
軸をいくつか掛け合わせることが、有効な顧客(セグメント)を発見するヒントになるので、色々掛け合わせてみると良いと言われます。
これまで見ていただいたように、厳密なMECEをつくる必要はありません。検討の目的が果たせるくらいのMECE感を持つことが大切だ。くらいに思って活用していくことが時間と効果の最大化を図れます。
5.まとめ
問題解決などで、アイデアや意見のヌケモレを防ぐには、MECEが有効です。
一方、
MECEには限界があることを知って程々に利用すべきだと認識しておくことです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
こうした記事も読んでやってください。
終わり