「未来が予測できたら…」と思ったことはありませんか?
今日はそうした当たるかもしれない予測にまつわる技術と関連するお話しを2回に分けてお話させていただければと思います。
今日はその壱 S字曲線についてです。
次回その弐は、太陽黒点と経済予測についてお話ができればと思っています。
1年後の景気予測をピタリと当てることができれば、大金持ちになることも夢ではありません。
将来のヒット商品が分かれば、あらかじめ買いだめしておいて、需要のピークが来たときに売りさばけば大きな利益を得ることができます。
しかし、実際には当たらないことが多い(^_^;
ヒット商品は,売れ始めて気がつくという人がほとんどだと思います。
私自身、「あ~あっ、あの時買っておけば…」と思ったことが何度もあります。
実際、専門家の経済予測でさえ全然当たらないといわれています。
たとえば、マクロ経済予測は株価などの運用には役立たないとはっきりと述べている専門家の方もいます。
とはいえ、経済活動の一部の予測はそこそこ当たると言われる領域もあります。
たとえば、S字曲線を用いた製品の普及についての予測です。
S字曲線とは?
新製品の普及過程は一般的に、普及率(採用者数)を縦軸、普及にかかる時間を横軸に取った時に、累積度数分布曲線がS字を描くことが知られています。
出所:招き猫が書籍を参考に独自に作成
こうした普及の過程をロジャーズ(1990)は、「イノベーション普及学」の中で、
「釣鐘型の度数分布曲線とS字型の累積度数曲線」を用いて説明しています。
特に、アーリー・アダプター(オピニオン・リーダー)が採用する13.5%の段階から普及率16%を過ぎるころから急速に普及が拡大し、その後の拡大期と衰退期を経て収斂するモデルと説明しています。
数学的には、ロジスティクス曲線やゴンベルツ曲線などの指数関数式を用いることになります。
ここでは、数式などは用いずに、図などを用いて紹介していきます。
参考:E.M.ロジャーズ 『イノベーション普及学』 産能大学出版部 1990年
ちなみにこの書籍「イノベーション普及学」はすでに絶版のようで、中古品しかありませんでした。もし読みたい方は図書館などでご確認いただければと思います。
実際の製品普及の事例をご紹介しましょう。
これは、テレビとVTRとCDの普及率のトレンドを描いたものです。
出所:内閣府経済社会総合研究所「家計調査の動向平成15年度版」P.26
家庭用のテレビ(TV)は、みごとなS字カーブを描いて普及したことが分かります。
家庭用VTRの世帯普及率の変化をもう少し詳しく見ていきましょう。
当時、先行販売したソニーのベーターマックス方式を、ビクターが主導するVHS方式のVTRが逆転した時期の普及率は1.3%でした。
その後、デジュア・スタンダード(標準の規格)となった83年の普及率が11.8%でした。
後発だったVHS方式でしたが、世帯普及率2~3%時点でシェアーの高かった技術規格がその後の大勢を決しています。
普及曲線は、後半の乱れが多少ありますがほぼS字型のカーブを描いています。
ソニーは、初期の戦略を誤ったため、後発メーカーにやられる隙を与えてしまいました。
別の事例も見てみましょう。
家庭用テレビゲームの普及の様子を出荷数量で描いたものです。
10年くらい前に私が調べたものから抜粋した資料です。
ファミコン発売開始後の1983年度から、当時得られた2005年度までの動向をグラフ化しています。
ゲーム機の各世代のデファクト・スタンダード(事実上の規格)になった、ファミコン、SFC(スーパーファミコン)、PS(プレイステーション)がきれいなS字のカーブを描いています。
第1世代のデファクト・スタンダードになった任天堂のファミコンについて、もう少し振り返ってみたいと思います。
これは、家庭用テレビゲーム機が発売されはじめた当時のゲーム機の一覧です。
まさに群雄割拠、多くのメーカーが参入して混戦状態でした。
図から分かるように当時のファミコンは、「独占的な先行者」というより「競争市場の後発組のひとつ」でした。
この14機種が入り乱れる状況を制し「ファミコン」がデファクト・スタンダードを獲得しました。
その要因は、いろいろ書かれていますが、
1.良質なソフト供給
2.ハードの性能
3.低価格
といわれています。
発売2ヶ月で9万台を売りシェア33%を獲得、87年末で累計50万台発売し
戦国時代のようなテレビゲーム市場を制圧しました。(累計生産台数1902万台)
ファミコンのイメージ図
出所:任天堂 HPから
このように、製品の普及課程をS字のカーブから読み解くことができます。
デファクト・スタンダードを確立する要因は、さまざまな顧客の選好により大きく依存しますが、その普及過程には共通した傾向を示すことがわかっています。
クリティカル・マスとは、「企業が生き残るために維持可能な最低限のネットワーク
サイズ(普及率)」のことをいいます。この普及率を超えられない商品は、デファクトスタンダードになれないと言われています。
新商品は、スタートからA点までの普及は容易に進むが、AからB点の間はなかなか普及せず、積極的な普及促進策を効果的に行わないと普及が進まないといわれています。
しかし、点Bを超えることができると普及がどんどん進んでいきます。
この点Bがクリティカル・マスと呼ぶ普及率のゲートに当たるものです。
ここを超えられる戦略を出せたメーカーが勝利するのです。
ちなみに、VTRでは後塵を拝したソニーですが、ゲーム機では後発ながら第3世代で勝利しています。当時のソニーの素晴らしい所でしょう。
久多良木さんという天才の存在のおかげでもあります。
さて、マルクハーンが次のような言葉を述べています。
「未来はある日突然に来るものではなく、現在にその兆しがある。
未来を知らんとするもの現在を凝縮すべし。
現在の中に未来への萌芽が潜んでいるから。」
未来を予測するひとつのやり方は、それぞれの縦の流れ(技術トレンド)の歴史観に対比しうる横断観を持つということだそうです。
自分たちの置かれている外界の事情を客観的・俯瞰的に出来るだけ正確に把握すること。
縦の流れと横の広がりといった両面をより深く、より正確に捉えようとする姿勢で、
この世を眺め、技術や世の流れの行く先を推し量れば、その人の努力次第で感知できる域に達するのだそうです。
私たちが将来を俯瞰する上で、重要な要素は4つだそうです。
社会、経済、政治、技術の4象限の変化を的確に把握し、これを先取りして動く。
それができる個人が適者生存、生成発展への成功者への道を許されることになります。
とはいえ、そうした事が分かったとしても、私のように「全然当たらない~!」という人間がいるのも事実です。簡単にできるようなら皆、成功者になっていますよね(^_^;
みなさまは、未来の萌芽を読み取ってみてください。
なお、S字カーブについて、興味ある記事を書いている人もいます。
時間があったらぜひお読みください。参考になります。
S字成長カーブについての考察が詳しくされています。
将来の動向の予言も参考になるかもしれません。(p.4にあります)
また、こちらの記事にはサブプライムローン問題を事前に予測した方のことが乗っています。
経済の専門家と言われる人の予想は当たった話しはほとんど聞きません。
あの、2009年のリーマンショックでさえほとんどの専門家が外しています。
その中で、当てているのは凄いことだと思います。
今日の「その壱」は、ここまでとさせていただきます。
何かみなさまの参考になることがあれば幸いです。
次回「その弐」太陽黒点と経済の関係の予告です。
書こうとしていることを少しだけご紹介します。
太陽の黒点数の変化と経済活動などの間に相関関係や関連があるという報告が多数されています。
その真偽を、私自身はまだ確信を持てている訳ではありません。
たとえば、下の図を見て太陽黒点の推移と有効求人倍率や景気動向は相関があるといえるでしょうか?
有りそうとも、無さそうとも言えそうです。
でも、とても気になりませんか?
そのあたりを、書籍やデータを元に考察してみたいと考えています。
出所:総務省統計局データ、国立天文台太陽観測所 太陽活動データーベースより
ご参考まで
太陽黒点最小時期 その頃の経済動向
(平均黒点数)
1986年(178個) バブル経済 →1987年ブラックマンデー →92年から景気低迷
1996年(139個) 政権交代 →1997年消費税5%導入後景気冷え込む
2008年( 50個) いざなみ景気 →2009年リーマンショック
2019年( ?個) アベノミクス景気 →2020年 ? オリンピック開催後どうなる…
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
もし良かったら、ブックマークやコメントもしていただけると嬉しいです。