まねき猫の部屋

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未来の萌芽 S字曲線と太陽黒点と経済予測の話し その弐

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「未来が予測できたら…」と思ったことはありませんか?
今日は、その2回目。
太陽黒点周期が景気循環などの周期と連動しているかもしれないというお話をさせていただきます。
なお、2回では書き切れなかったので、近いうちに3回目を考えています。
まとまりの無い話しになっていることをあらかじめお詫びします。

さて私が、この太陽黒点周期と景気循環の関係を知ったのは、31年前のことです。
「マンガ 日本経済入門Part2」の中のテーマの1つとして扱われていました。

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この本は、「サイボーグ009」や「仮面ライダー」の著者でも知られる石ノ森章太郎先生の作品です。

全巻ハードカバーの描き下ろし作品で、その2作目になります。
このシリーズは全4巻通計で200万部を売り上げて、1巻から3巻の合計は、1987年の年間ベストセラーの4位を記録しています。
いまでは当たり前のように発行されていますが、大人向けの学習漫画という新ジャンルを創った作品でもあります。
第33回(1987年度)小学館漫画賞と第17回(1988年)日本漫画家協会賞大賞も受賞しています。

こんな凄い本だったことは、実は今回Wikipediaを確認して初めて知りました。
お恥ずかしい話です。

マンガ日本経済入門 - Wikipedia

Part2は1987年4月に初版が出ました。アマゾンで調べたらすでに絶版で中古本のみが扱われていました。興味のある方は以下をご覧ください。

http://amzn.to/2Eb6Grm

 

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出所:マンガ 日本経済入門Part2 日本経済新聞社 p.258

ここに書かれているように、太陽黒点景気循環を初めて指摘したのは、ウィリアム・ジェヴォンズです。
米国の設備投資循環(ジュグラー・サイクル)と太陽黒点の推移が同様の変化をしていることが分かります。

ジェヴォンズは、有名な経済学者で、この太陽黒点活動と景気循環との連動を1876年に科学雑誌『ネイチャー』に「商業恐慌と太陽黒点」という論文で、発表しました。
が、この説は他の経済学者からはあまり評判が良くなく無視され忘れ去られてしまいました。

しかし、1977年に太陽黒点の周期と震幅の間に55年の周期があるという説を吉村宏和氏が発見したことで事態は変わってきます。
この周期は、発見者の名を取って吉村サイクルと呼ばれています。

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出所:同上 p.259

このサイクルが、約50年を周期とする長期景気循環コンドラチェフの波と一致することから、ふたたび、太陽黒点景気循環との連動性がホットな話題となり、このマンガにも登場することとなったのでした。

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出所:同上 p.259

ユダヤ人は、そのことを昔から知っていてお金儲けに利用していたという話しも引用しています。

さて、ここで景気循環サイクルにどんなものがあるかを簡単に紹介します。

主な景気循環サイクルを、期間の短い順に示します。

キチンの波      約40ヶ月(約3.3年)在庫の増減を原因とする循環サイクル
ジュグラー・サイクル 約10年を周期とする設備投資循環とも言われる循環サイクル
グズネッツの波    約20年を周期とする建築活動に見られる循環サイクル
コンドラチェフの波  約50年を周期とする長期景気循環の波 景気循環の代表的理論

「周期の研究」という本では、以下のように関係性を図で説明しています。
太陽黒点の約55年の増減サイクルとコンドラチェフの波(サイクル)が一致しているように見えます。

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出所:周期の研究 KKベストセラーズ 飛岡健著 1989年発行 p.113 

 

また、「歴史を変えた太陽の光」という本では、アメリカの工業生産の成長率と太陽黒点の関係を示しています。

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出所:歴史を変えた太陽の光 あすなろ書房 桜井邦朋著 p.114-115

 

この図を見ると、成長率は1986-87年が好調のピークで、1992年に底を打つと予測しているように書いてあります。
太陽黒点が最も少ない時期に、景気は好調を迎えるという太陽黒点と景気は逆位相の関係にあると書かれています。

事実、太陽黒点は1986年(15個)に最小となり、その当時は平成バブル経済と呼ばれる活況期でした。
そして、翌年の1987年にブラックマンデーが起き株価は一転急降下し、日本は92年から景気が低迷しています。

的中と言いたい所ですが、この本は1992年2月に初版が出ておりその点を割り引いて考える必要があります。

しかし、この本が引用した資料はもっと早く書かれたはずで、その作者は予想を的中させたのかもしれません。
その方は、嶋中隆文氏と言います。
こうした太陽黒点景気循環の連動性を早くから指摘されていました。
嶋中氏は民間のエコノミストとして有名な方で、内閣府景気動向指数研究会委員もされています。

実は、先ほどの「マンガ 日本経済入門Part2」で引用している図も嶋中氏によるものでした。
あのマンガが出た同じ年の1987年7月に「太陽活動と景気」という本を出されていました。
その本は、2010年に文庫本としても再出版されています。
もう少し、こうした方の資料を分析していかなければならないでしょうが…
いまの段階では、まだ検証中なのでご容赦ください。

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調べていると、こんな資料も見つけました。
景気循環と太陽活動周期
一一物理経済学的アプローチ一一 嶋中雄二著

http://www.jcer.or.jp/academic_journal/jer/PDF/16-6.pdf#search=%27%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%83%8E%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%88+%E5%B6%8B%E4%B8%AD%E9%9B%84%E4%BA%8C+%E5%A4%AA%E9%99%BD%E9%BB%92%E7%82%B9%27

その中の図1を引用させていただきました。

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この図を見ると日本の名目投資率は、太陽黒点と正の位相関係にありそうです。
また、黒点周期の第16、18、21周期は相関関係が読みとれませんでした。
加えて、アメリカの工業成長率とは逆の相関が見られます。

こうした日米の逆相関については、嶋中氏は太陽黒点と日本と入ヨーク気温の変化に位相差があることから説明できるとしています。
この太陽黒点と気温の増減、それにまつわる景気循環の関係がキーワードとなっているようです。

さて、ここで景気循環サイクルと太陽黒点の関係を整理しておきましょう。

キチンの波:約40ヶ月(約3.3年) ←→ エルニーニョ・サイクル(太陽周期の1/3)
ジュグラー・サイクル:約10年の設備投資循環 ←→ 太陽黒点周期 11年サイクル
グズネッツの波:約20年の建築活動循環 ←→ヘールのサイクル(太陽黒点の2倍周期)
コンドラチェフの波:約50年の長期景気循環 ←→吉村サイクル(太陽黒点の5倍周期)


ここまで見ていただいた所では、太陽黒点周期と景気循環には相関関係がありそうに感じられます。

そこで、次は自分なりにデータを集めて相関関係を確認してみることにしました。
ここでは、太陽黒点周期と日本の求人倍率の推移やバブル時期の関係を見てみます。

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出所:総務省HP、国立天文台 観測データなどから著者が編集し作成

要点を示します。

太陽黒点最大時期 その頃の経済動向
周期 年 (個数)
第20 1968年(150個) いざなぎ景気 →1973年変動相場制移行/オイルショック
   1976年( 18個)
第21 1979年(200個)    景気低迷長引く(景気拡大期が見られない)
      1986年( 15個)
第22 1989年(211個) バブル経済  91年バブル崩壊→92年から景気低迷
   1996年( 12個) 1993年政権交代→1997年アジア通貨危機/消費税5%後景気冷
第23 2000年(174個)    ピークが半期ずれて、いざなみ景気へ
   2008年(  4個) いざなみ景気 →2009年リーマンショック
第24 2014年(114個)  アベノミクス景気  
   2019年(  ?個)        →2020年オリンピック開催

有効求人倍率は、太陽黒点の第20周期と22周期、第24周期は同じ位相で増減しているように見えます。
同様に、好調景気の時期も第20周期と22周期、第24周期に認められました。
特に、先ほどの嶋中氏の結果と比較出来る第20周期の点でも一致しています。

一方、第21周期、第23周期は同位相となっていません。

今回比較した太陽黒点周期の第20周期から第24周期だけを見ると
太陽黒点と有効求人倍率に相関はあるとは言いにくいでしょう。

そこで、別の経済活動の指標の一つである日本株価の推移も比較を試みてみました。
まずは、その比較した図をご覧いただきましょう。

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出所:国立天文台 観測データ、株価より著者が編集し作成

見ての通り、日経平均株価において、
入手出来た1949年の株価109.91円からピークの1989年の株価38,915.87円の間は約360倍跳ね上がっています。
そのためか、1985年以降は太陽黒点と比較できそうな山谷が確認できますが、それ以前は山谷が有るのか目視では検証がほとんど出来ない状況となっています。

そこで、年ごとの数字の差を出してみたり、移動平均との差で比較したり、年度をシフトしてみました。
あれこれと図を加工した割に、これまでに確認できた結果と相関性のありそうなグラフはなかなか出来ませんでした。

比較的、図Bの株価を11項移動平均化した値と実際の株価の差を対数表示したものが一致している感じです。
11項移動平均とは、前後5年分と当年分の合計11年分の平均を出して当年度の値とするやり方です。
短周期のノイズ(細かな変動)をフィルタリングすることができる方法です。
11項というのは、太陽黒点の平均周期でもあり、比較的良い結果になったのはそうした点から来ているのかもしれません。

とはいえ、黒点周期と株価の連動性について、そうそううまく説明できる指標は見つけられませんでした。

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その他の指標も大体同様な傾向にあります。これは、消費者物価指数太陽黒点の推移です。

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出所:総務省 データベース、国立天文台 観測データから著者が編集し作成

黒点と同じ位相なのは、第22周期くらいです。
こうした図表を見て感じたことは、どうも1990年前半の太陽黒点の第23周期あたりから、指標と黒点数の相関関係が変化しているのではないかという疑問が湧きます。

そこで、嶋中氏のコメントにあった太陽黒点数と東京都の気温を比較してみました。

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出所:気温は気象庁 基礎データベースから著者が編集し作成

 

この図では比較しにくいので、先ほどの株価の時のように気温の漸近線を求めてから
実際の気温と漸近線の値の差を出してみました。

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太陽黒点周期の第19周期から第22周期までは比較合っているようです。
第23周期、第24周期は判断が難しいかもしれません。

太陽黒点の少ない時期は、太陽活動が停滞し雲の発生も増えて地球に注ぐ光が減るという説があります。

たとえば、これはアメリカの穀物取引の小麦卸売り価格と黒点数の推移です。

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出所:歴史を変えた太陽の光 あすなろ書房 p.113

1800年頃に太陽黒点が減少した時期に小麦が不作となり、価格が高騰した様子が示されています。

このように、太陽黒点の変動が、気温の変化を起こし、さまざまな経済活動に影響しているとするのが、太陽黒点景気循環の連動性を説明する仮説となっているようです。

 

実は、地球は氷河期に入ろうとしているが、温暖化がそれを遅らせているという説があります。

「人類と気候の10万年史」という本の中で説明されています。

 

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出所:BLUE BACKS

 

図だけ紹介します。

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出所:同上の本 p.156-157

2万3000年ごとに、地球は公転軌道などの偏心の影響で寒冷化する時期があることが地層調査から分かってきました。
しかし、先ほどの東京都の温度推移を見ても分かるように温暖化が進んだように見えます。
この先をどう考えるべきかを問うています。

時間が出来たら、この本のこうした内容を紹介できればと思います。

また、氷河期の到来を危惧することを、いくつかのブログでも取り上げられています。
図などを参照するのははばかられるので、参照するURLだけつけておきます。


太陽黒点数が「0」となった2016年6月からの世界は - In Deep

 

ちょっと、手に余るテーマに取り組んでしまいました。
まとまりの無い話しになってしまったことをお詫びします。

時間が取れたらかならず3回目を書いてみたいと思います。


今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。