添削から
リポート添削で、コメントとして「アンテナを張る」とか、「アンテナを高く上げる」という言葉をよく書きます。しかし、慣用句としての意味は伝わっていると思いますが、物理的な意味は知っているのだろうかと疑問が湧いてきました。そんな些細なことを書いた記事です。お時間があったらお付き合いください。
1.アンテナ
学生のリポートを添削しているときに、
「アンテナをしっかり張りましょう」とか、
「アンテナを高く上げましょう」
とアドバイスすることがあります。
それらの言葉の意味は辞書には、
「アンテナを張る」
いつも気をつけて、いろいろな情報を集める。
goo辞書
情報を集める手段を講ずる。
広辞苑
「アンテナを高く上げる」
情報の感度を上げる。
goo辞書
と書かれています。
私も、その点を伝えたくて書いています。
こうした言葉は慣用句と言い、便利な言い回しなのでよく使っています。
でも、感覚的な意味は理解されていると思いますが、物理的な意味は分かっていないかもしれないと思う次第です。
(その点は、巻末に国の調査結が示しました)
(慣用句:「骨を折る」や「油を売る」のように、元来の意味とは異なる意味言葉)」
さて、実際に目に出来そうなアンテナを取り上げてみました。
テレビアンテナは、よく目にしますし、高い所にアンテナを立てていますからね。なんとなく「アンテナを高く上げる」の意味は理解いただけそうです。さて、「アンテナを張る」はどうなんでしょう。
(UHFアンテナなどは高所設置が良いとはいえない場合もあります。末尾参照)
こうしてアンテナの存在を確認すると、アンテナの存在感が日ごとに減っているように思いました(^◇^;)
例えば、最近の車のアンテナはすごく小さくなってしまって、ほとんど目立たなくなってしまいました。洗車でもしない限りほとんど意識されていないのでは?
なお、昔の車のアンテナはこんなでした。
存在感ありますよね。昔私の乗っていた中古のマークⅡはパワーアンテナと行って電動でした。存在感ありありです。そんなことが妙に格好いいと思っていた時代でもありました(^_^;)
さて、こうしたアンテナを実際に見ていれば「アンテナを高く上げる」もなんとなく意味としても分かってもらえそうです。
しかし、テレビアンテナを除くと、普段使いでラジオも聴かない?使わない?アプリの「Radiko」で聴いている人の方が多いかもしれません。
自宅のWiFiのアンテナも小さいです。(内蔵しているのも増えました(^_^;))
こうした状況から、「アンテナを高く上げる」は、ともかく「アンテナを張る」の物理的な意味は分かってない??と、入らぬ心配をするまねき猫でした。
2.アンテナを張るの例
なんとか、「アンテナを張る」の具体的な例を探してみました。
しかし、身近な例が中々見つかりません。
ようやく検索していて見つけたのがこれ。ラジオのFMアンテナ。
これも例として上げたものの、実際に自宅にチューナーが有って、FMアンテナを設置している方は少ないかもしれません(^_^;)
さて、どうしましょうか?
3.アンテナの物理学
アマチュア無線をやっている人ならアンテナを張るは、必須の知識です。
たとえば、50M HZ用の半波長ダイポールアンテナならこんな感じです。
約3mの信号線を張ります。これを見ると「アンテナを張る」という言葉の感覚が分かるように感じます。
半波長ダイポールアンテナを使っているアマチュア無線の人は少ないでしょう(^_^;)
実際にやっている無線家は、大体こんなアンテナが立っています。
こちらのアンテナは、テレビと同じ八木アンテナのでっかい版です。
(メロンパン日記さんのHPから借用。URLがhttpなので参照が添付できずすみません)
「アンテナを張る」の事例を見つけるのは大変だと感じました。
一方で、「アンテナを高く上げる」は、こうしたテレビ塔でも理解がしやすいですね。
日本でよく知られているテレビ塔といえば、東京スカイツリーでしょう。
高さ634mの世界一高い電波塔です。地上波やFMラジオなどの電波を送信しています。
4.終わりに変えて
思いつくままに「アンテナを張る」や「アンテナを高く上げる」の物理的な意味を書いてきました。
最後に、受信アンテナの高さによって受信電波の強さが変わるお話しを書いて終わりにしたいと思います。
ハイトパターン
電波は、直接伝わる波と、地上を反射する波が影響し合います。
その2つの波がアンテナに届くときの届く距離の違いで波長の位相がずれると、電波が弱くなったり、強くなったりします。これをハイトパターンと呼びます。
ハイトパターンの幅をハイトパターンピッチと言います。
簡易的に求める式が公開されています。
この式から、たとえば地上波UHFの電波を例に計算してみましょう。
この例では、テレビ塔の高さを先ほどの251mを用い、距離8,700mで計算して見ました。
地上波UHFの場合のハイトパターンピッチは約10mとなります。
このことから、地上波デジタル放送をUHFで受信する場合は、高さをPの半分の約5mか15mにすると電波が強くなることが分かります。一般の戸建てですと、5mということですね。
近所の家を見ると意外と10m近くの高さにアンテナを上げているケースが見られます。それをブースターを付けて電波を強くして視聴できるようにしているようです。
2階建ての家なら、ベランダ辺りで約5mです。
実際にそうした設置の仕方をしているご家庭もありました。設置した工事屋さんがハイトパターンをご存じな方なのだと関心したりします。
電波の周波数が高くなると波長も短くなります。WiFiなどは2.5Ghzや5Ghzを仕様しているのでハイトパターンピッチはかなり短くなります。少し動かしただけで電波状態が変化する理由が分かりますね(*^O^*)
慣用句の理解度
さらにおまけです。
文科省が「国語に関する世論調査」というのをやっています。
その2021年度の資料に、慣用句についてのこんなアンケートがありました。
慣用句の「破天荒」の意味について答えてもらったものです。
1番多かったのは、(イ)の”豪快で大胆な様子”でした。約65%の人が選んでいます。
ところが、正解は(ア)なんです。
正しくは、「誰も成し得なかったことをすること」でした(^_^;)。
年齢別の正解率がこちらです。
16歳~19歳の、正解率は13.2%でした。
一方で、70歳以上では、32.9%と高くなっています。
慣用句については、意味そのものを誤解しているケースも多いようです。
つまらないお話しに最後までお付き合い頂ありがとうございました。
終わり