健康
昨年10月に厚生労働省の食事摂取基準(2025年版)が改訂されました。5年に1度の改訂です。改めて読むとダイエットに関する面白い記述を見つけたり、少し変化した部分がありました。そうした点をご紹介します。良かったらお付き合いください。
2025年版
2005年版の策定以降、5年ごとに改定されてきた食事摂取基準の2025年版が24年10月に公表されました。その内容から一部をご紹介したいと思います。
食事摂取基準は、栄養士さんなどが、栄養政策を推進する際の基礎となるもので、一般の方にも参考になる点が多い資料です。
その内容から、私が今回再発見した興味深い記述をご紹介します。
資料はこちらのURLから入手できます。
カロリーを減らしても体重が減らない時期が来る!
ダイエットをしている人なら、ご存じの通り、体重を減らすには、
摂取エネルギーを消費エネルギー以下にすることが必須です。
一般的には、脂肪は1g=7kcalなので、例えば、毎日100kcalをダイエットすると、1日約14gの脂肪が減っていき、1ヶ月で429gの脂肪が減り、1年では約5.2kgの脂肪が減ると理解されている方が多いと思います。
ところがです!
今回、食事摂取基準を詳しく読んだら、それは大きな間違いだったと分かりました。
まずは、資料に載っていたこの図表をご覧ください。
出典:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書p.59
体重減少は、点線で書かれた1年後の減少直線の5.21kgではなく、
実線で描かれた指数曲線に沿って減少するというのです(^0^;)
この1日100kcalのダイエットでは、2kgの体重減少で収束するとのこと!
この理由は、ダイエットを継続すると、体重減少に伴ってエネルギー消費量が減ってくるからと説明されていました。その部分を引用したのがこちらです。
エネルギー消費量には成人男性でおよそ200 kcal/日の個人差が存在すると報告されている3)。また、個人のエネルギー消費量を正確に測定することは極めて難しい。そこで、エネルギー消費量が仮に2,462~2,862 kcal/日の範囲にあると推定し、期待される体重変化(減少)量を計算すると、1.87~2.18 kgとなる。逆に、期待される体重変化(減少)量を2 kgにするためには、エネルギー摂取量の変化(減少)が92~107 kcal/日であることになる。なお、脂肪細胞1 gが7 kcalを有すると仮定すれば、100 kcal/日のエネルギー摂取量の減少は14.3 g/日の体重減少、つまり、5.21 kg/年の体重減少が期待できるが、上記のようにそうはならない。これは、一つには、体重の減少に伴ってエネルギー消費量も減少するためであると考えられる。体重の変化(減少)は徐々に起こるため、それに呼応してエネルギー消費量も徐々に減少する。そのため、時間経過に対する体重の減少率は徐々に緩徐になり、やがて、体重は減少しなくなる。この様子は、理論的には図5のようになると考えられる。
なんとなく、実感としてもうなずける部分があります。以前、ダイエットしたことがありましたが、摂取エネルギーは継続的に減らしているのに減らなくなった時期がありました。なるほど、こうした理由だったのですね。
なお、この指数カーブの導出は、以下の様に説明されていました。(P.59)
エネルギー出納が保たれ体重が維持された状態にある多人数の集団で、二重標識水法によるエネルギー消費量と体重の関係を求めた検討によれば、両者の間に次の式が成り立っていた40)。
ln(W)=0.712×ln(E)+0.005×H+0.004×A+0.074×S-3.431
ここで、ln:自然対数、W:体重、E:エネルギー消費量(kJ/日)=エネルギー摂取量(kJ/日)、H:身長(cm)、 A:年齢(歳)、S:性(男性=0、女性=1)。 ここで、両辺の指数を取り、同じ身長、同じ年齢、同じ性別の集団を考えれば、身長、年齢、性別の項は両辺から消去されることによってこの影響はなくなる。個人が異なるエネルギー摂取量を変化させた場合にも、理論的にはこの式が適用できると考えられる。この式から次の式が得られる。
⊿W=0.712×⊿E
ここで、⊿W:体重(kg)の変化を初期値からの変化の割合で表現したもの(%)、 ⊿E:エネルギー消費量(kJ/日)の変化を初期値からの変化の割合で表現したもの(%)。 例えば、エネルギー消費量(=エネルギー摂取量)を10%減少させた場合に期待される体重の減少はおよそ7%となる。
【計算例】体重が76.6 kg、エネルギー消費量=エネルギー摂取量=2,662 kcal/日の個人がいたとする(これは上記の論文の対象者の平均体重及び平均エネルギー消費量である40))。
この個人が100 kcal/日だけエネルギー摂取量を減らしたとする。
エネルギー摂取量の変化(減少)率=100/2,662≒3.76% 期待される体重変化(減少)率=3.76×0.7≒2.63% 期待される体重変化(減少)量=76.6×2.63%≒2.01 kg
ちなみに、消費エネルギーの内訳は、以下の通りです。
この資料では、これらのどの部分が減ったは説明されていませんでした。
主に基礎代謝が減少している可能性が高いと思われます。
基礎代謝は消費エネルギーの60~70%を占めます。ダイエット中も身体活動は同じ状態と予想出来ますので、減ってはいないでしょう。また、DITは食事量が減るので多少は減少するでしょうが、全体量が多くありません。なので比率の高い基礎代謝が減少していると想像できます。
基礎代謝は、主に内臓系での消費が多く、約50%を占めます。骨格筋が22%、脳が20%です。それぞれが数%ずつ消費効率が向上して、消費エネルギーが減少したと考えるのが良さそうです。
つまり、車で言うことの燃費が向上してしまうのですね。
この資料では、体重の変化を記録して、減少幅が減ってきたら、消費エネルギーが減ったと可能性があるので、ダイエットする量を見直すことが望まれる有りました。
ダイエットするのは本当に大変です。
PFCバランス
健康のために、タンパク質や脂質、炭水化物のバランスを意識している人も多いと思います。その食事バランスの指標に「PFCバランス」があります。
食事摂取基準が、推奨する「PFCバランス」が以下になります。
PFCは、
Protein(タンパク質)
Fat(脂質)
Carbohydrate(炭水化物)
の頭文字を取ったものです。
エネルギーを産生する栄養素及びこれら栄養素の構成成分である各種栄養素の摂取不足を回避するとともに、生活習慣病の発症予防と重症化予防を目的とするものです。
3つの栄養素の概要は以下の通りです。
タンパク質(Protein)
タンパク質は体を構成する成分の中で水分の次に多い(水分60%、タンパク質15~20%)栄養素です。筋肉や臓器、皮膚や毛髪、体内ホルモンや酵素などの構成成分で、生命の維持に欠かせません。中でも健康的な体づくりに必須なアミノ酸が20種類あり、健康維持のために欠かせない栄養素です。必須アミノ酸は食事で摂取する必要があるため、タンパク質が豊富に含まれる肉や魚、卵や乳製品、豆類などを積極的に摂津必要があります。
脂質(Fat)
脂質は細胞膜やホルモンの主要な構成成分となります。脂質は1gあたり7kcalと炭水化物の倍以上のエネルギーを持つため、効率の良いエネルギー源として毎日欠かすことなく摂る必要があります。
炭水化物(Carbohydrate)
炭水化物は1日のエネルギー量の50~60%を占め、消化管から吸収されエネルギー源となる糖質と、体内では消化されない食物繊維に分けられます。糖質は1gあたり4kcalのエネルギーを持ち、運動や脳のエネルギー源となります。
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2025年版タンパク質は20%MAXで良いのか
PFCバランスの年齢別、性別の一覧表がこちらになります。
この割合は、まずタンパク質の量を決めて、脂質の上限を設定し、残りを炭水化物にしています。しかし、このタンパク質の目標値20%というのが低すぎるのではないかと、過去の色々な場で指摘されていました。
タンパク質の上限撤廃?
資料から、タンパク質の摂取量についての記述の変化が見られました。
たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなければならない。最も関連が深いと考えられるのは、腎機能への影響である。健康な者を対象としてたんぱく質摂取量を変えて腎機能への影響を検討した試験のシステマティック・レビューでは、35%エネルギー未満であれば腎機能を低下させることはないだろうと結論づけている53)。また、20%エネルギー以上(又は1.5 g/kg 体重/日以上又は 100 g/日以上)の高たんぱく質摂取が腎機能(糸球体濾過率)に与える影響を通常又は低たんぱく質摂取(高たんぱく質摂取群よりも 5%エネルギー以上低いものとする)と比べたメタ・アナリシスでは、有意な違いは観察されなかった54)。さらに、たんぱく質摂取量と腎疾患へのリスクに関する研究をまとめた2023 年のアンブレラレビューでは、観察期間が短いなどの課題が残されているものの、高たんぱく質摂取により腎疾患の発症リスクを高める、という結論には至らなかった55)。したがって、現時点ではたんぱく質の耐容上限量を設定し得る十分かつ明確な根拠となる報告はないため、耐容上限量は設定しないこととした。
タンパク質の摂取上限値の設定をしないことになったようです。
とはいえ、説明資料には、相変わらず、目標量としては20%が書かれてはいますが(^0^;)
おわりに
今回は、5年ぶりに改訂された食事摂取基準について、私が興味を持った点を2点ご紹介しました。
高齢者のタンパク質不足がよく話題のなります。そうした面からも、20 %以上取るよう心がけていきたいと思います。
何かの参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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終わり