アメリカの次…
「ちょっと先の未来が見通せたら」と、いつも考えています。今日はそんな私の関心事の一つ、次の覇権国を取り上げてみました。
「現在の中に未来への萌芽が潜んでいる」とマルクハーンは言いました。それを見つける上で、S字カーブという規則性の法則を利用するお話です。とはいえ、予言めいたことは書いていません。状況認識程度です。
良かったらお付き合いください。
1.S字カーブ
S字カーブは、新しい製品や仕組みが生まれて、世に認知され行き渡って衰退するまでの様子を表したものです。
このS字カーブを応用することで、ちょっと先の未来を想像しやすくなると言われています。
招き猫が書籍を参考に独自に作成
S字カーブの事例を、家電の販売から見てみましょう。
カラーテレビとVTRの例
カラーテレビとVTRの製品普及の事例です。
カラーテレビの本放送が開始されたのは1960年です。発売当初は価格も月給の何10倍もするもので、車より高い高値の花でした。しかし、1965年に14型カラーテレビが14万円と、1インチ1万円になったことや、1966年に新三種の神器と呼ばれステータス品の購入がブームとなったことなどによって普及が加速しはじめ、1975年に普及率90%まであっという間に駆け上って、各家庭に1台という時代になりました。
普及カーブが、みごとなS字カーブを描いています。
もう1つ家庭用VTRの事例を見てみましょう。
今はほとんど利用する人はいないでしょうが、少し前までは家庭でテレビ放送を録画するのには、家庭用VTR(Video Tape Recorser)を利用していました。
当時、先行販売したソニーのベーターマックス方式と、後続のビクターが主導するVHS方式のVTRが激しく市場シェアを争っていました。
しかし、後発だったVHS方式の陣営が販売力で上回り、業界標準の規格となりました。1983年、普及率が11.8%の頃です。こうした技術がデファクトになる普及率のタイミングが存在します。
VTRの普及曲線も、多少の乱れがありますがほぼS字型のカーブを描いています。
ここまで見ていただいておわかりのように、
ある技術やサービスが普及する過程には一定の動きがあること、また技術が競争状態にあるときは、いずれ1つの技術に収束し、そのタイミングが存在する
ことが読み取れます。
2.S字カーブから見る進化の法則
テレビ放送の記録技術は、今ではDVDやBRレコーダー、HDDストレージに世代交代しています。こうした技術の革新も、S字カーブの進化の法則に沿っていると言われます。
新技術が誕生し成長し成熟した頃に、次の新技術が誕生しパラダイムシフトを起こすという法則です。
このパラダイムシフトの分かりやすい事例が、家庭用テレビゲームです。
大ヒットした1983年のファミコンから、PSが成熟期に入った2003年までの推移をご覧ください。
各世代のヒット商品であるファミコン、SFC(スーパーファミコン)、PS(プレイステーション)がきれいなS字のカーブを描いています。
そして、現ヒットモデルが成熟期に入った頃に、次の世代の商品が出現している様子がうかがえます。
このようにS字カーブから技術の進化のパラダイムシフトの時期が大体想像できます。
とはいえ、次世代のヒットモデルが早い段階で分かるわけではありません。その点をテレビゲームの事例から見てみましょう。
デファクトスタンダードになれなかったゲーム機の存在です。
3.競争状態からの勝者と敗者
S字カーブを区間の変化で表すと、下図のような釣り鐘型のカーブになります。
そのカーブが、製品ライフサイクルと言われるものです。製品ライフサイクルの各段階の特徴は以下のように説明されることが多いです。
そして、この製品ライフサイクルの成長期の段階の特徴に、新規参入者が急増し激しい競争状態になることです。
たとえば、初期のゲーム機の競争段階は、極めて熾烈な戦いでした。
13機種の製品が入り乱れるいわゆる乱戦状態でした。その中で、勝利したファミコンは、「独占的な先行者」というよりは、「競争市場の後発組のひとつ」でしかありませんでした。
ファミコンが勝利した理由は以下のように言われています。
1.良質なソフト供給
2.ハードの性能
3.低価格
の、3つです。
出典:任天堂HPより
発売2ヶ月で9万台を売りシェア33%を獲得、87年末で累計50万台発売し競争状態からテレビゲーム市場を席巻しました。
このことから、学べることは、
多くの競争者の中からどの機種が勝ち残るかを見極めるのはとても難しいということです。
VTRの例でも、技術的には優れていたソニーのベータ方式が敗れています。こうした事例には、事欠きません。
未来の可能性を考える上で、もうひとつの大切なことは、何が残るかを推理する力が重要といえます。
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4.ここまでのまとめ
S字カーブと製品ライフサイクルの視点から未来の萌芽について見てきました。
マルクハーンの言葉、
「未来はある日突然に来るものではなく、
現在にその兆しがある。
未来を知らんとするもの現在を凝縮すべし。
現在の中に未来への萌芽が潜んでいるから。」
があります。
これをS字カーブや製品ライフサイクルで見ると、
S字カーブから、
・技術やサービスの普及過程には一定の動きがある
・現世代の成熟期にパラダイムシフトが起こる
・成熟期に次世代の萌芽が存在する
・萌芽の競争状態から1つに収束する
ことが経験的に明らかです。
また、
製品ライフサイクルから、
・成長期には競争状態が起きる
・その中から勝ち残るものを推理する力が必要
と言えそうです。
出典:予測のはなし 大村平 p.219より
サイクルの類似性をどう見極めるかです。
さて、ここからが、今日の本題です、お時間のある方だけお付き合いください。
5.次の覇権国
今の覇権国は、アメリカですね。
名目GDPでも、1番になっています。
中国が、2010年から2位に上がりました。その頃から、中国の覇権狙いの活動が目につくようになりました。
さて、次のグラフをご覧ください。
これは、日本の1人当たりGDP購買力平価の世界平均の倍率推移です。
1980年代は、「ジャパン・アズ・No.1」と言われるような勢いのある時代がありました。しかし、1990年後半にバブル崩壊後以降右肩下がりのカーブとなっています。
このトレンドから、ライフサイクル上、日本は成熟期から衰退期に移行しているように見えます。
日本は、覇権国になるチャンスを逃した国になるのでしょうか?
下は、覇権国になった国や最近勢いのある中国や韓国を追加してみた図です。
覇権国の1人当たりGDP購買力平価の倍率の首位が、
オランダ→イギリス→アメリカ
と変改していく様子が読み取れます。
ある本では、およそ100年で覇権国が入れ替わっていると書かれています。
出典:周期の研究 p.212 1989年発行
その本では、21世紀は日本が覇権国かもしれない……と、?マークがしてありました。
この本は1989年に出版された本なので、かなり古いです。しかも、バブル真っ盛りの時期ですね。あれから32年たった2021年の現状はご覧の通りです。
もう1つ、主要国の1人当たり名目GDPの推移も確認してみましょう。
シンガポールが結構頑張っています。
オランダもある時期アメリカを抜いていましたが、最近は横ばいです。
1人当たり名目GDPで見ると、中国はまだまだですね。
1人当たり名目GDPを上位15位まで並べたものも見てみましょう。
こうしてみるとアメリカは5位で、その上に4つの国が並びます。
1位はルクセンブルグです。
ドイツ・ベルギー・フランスに囲まれた立憲公国です。
2位はスイス
3位がアイルランド
でした。
アメリカの次に
デンマークが6位に位置しています。
かつて海洋進出して一時北欧全域を併合したことのある国です。
シンガポールが7位にいます。
イギリスの植民地でしたが、マレーシアから1965年に独立しました。
工業や金融の盛んな国です。東南アジアの貿易上の拠点として発展しています。
ちなみに日本は24位(40,089US$)でした。
韓国は29位(32,645US$)です。
中国は64位(10,511US$)でした。
もう一つ、世界人口の推移と上位11位までの国についてです。
中国が1位
インドが2位です。
増加率からするといずれインドが1位になるでしょう。
アメリカは3位ですね。
日本は意外と多く11位です。
情報は、以下のサイトを参照しました。
さて、次の覇権国はどこになるのでしょう。
いわゆる名目GDPでは、アメリカと中国が1,2位を争っています。
しかし、単純な総量で覇権国は決まらないことはご覧になったとおりです。
中国は、最近の様子からするとむずかしそうです。
インドはどうなんでしょうか?
再度、日本の可能性は?
シンガポールは意外とダークホースかも?
100年サイクルからすると、約30年後の2050年ごろに、次の覇権国が出ていることでしょう。今後しばらくは色々な国が競争状態になることが、S字カーブの進化の法則から予測されます。その影響が私たちにも出ることでしょう。
あなたも、30年後の覇権国を予想してみませんか?
最後まで読んでいただきありがとうございました。
終わり