問題解決
「数値化できないものは改善できない」という言葉があります。提唱者は、「ピーター・ドラッカー」とか「ウィリアム・トムソン博士」など諸説有りますが、いずれにしても、改善のためにはまず対象を数値化し、測定することが重要であることを説いています。ただし、数値化は目的ではなく、手段です。数値化することで、何が問題なのか、改善の度合いをどのように評価するかが明確になり、効果的な改善策を実行できるようにすることが重要です。
この記事では、そうした現状把握における数値化の重要性や具体的な方法についてまとめてみました。良かったらお付き合いください。
数値化のメリット
何かを改善する上では、現状の姿を定量的に把握することが大切です。数値化することで、次のようなメリットがあります。
・問題が明確になり、目標が立てやすい
・目標達成の進捗が把握しやすくなる
・評価が客観的に出来る
たとえば、不良の発生数をパレート図を使って、現状の姿を数値化すると、目指すゴールや改善目標が立てやすくなります。
こうしたメリットを得るために、数値化技術を学んでおきたいモノです。
活用出来れば、主観的な意見や予測に頼らず、客観的なデータをもとに現状を把握することが出来、進捗度や結果の評価がしやすくなります。これにより、問題の本質や背景を明確にし、効率的・効果的な問題解決が進められます。
一方で、数値化を苦手とする人は多いようです。私が担当している科目に中で、現状の姿を定性的にしか表現出来ていない例をよく目にします。
たとえば、こんな感じです。
定性的な現状の姿の記述例
・○○製品の工程不良が多発している
・製品開発の納期遅れが頻発している
・報告書の作成に時間がかかっている
・研修受講者の盛り上がりがかけている
・同じようなミスや事故が再発している
こうした表現は、初期段階の問題認識としては良いのですが、問題解決を行う上では、事実情報を数値で捉えておくことが望まれます。
では、数値化の手順や方法を見ていきましょう。
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数値化のステップ
ステップは次の通りです。
①情報収集→②情報加工→③数値化
①情報収集
数値化したい工程や物事のデータを収集します。
例えば、気にしているのが「○○製品の工程での不良が多発している」であったら、過去の工程不良のデータを収集します。
これらのデータを収集するキーワードは、Q:品質、C:コスト、D:納期と言ったQCDに沿って行うと良いでしょう。
意識したい表現の中にヒントがあります。また、経営学や品質を学んだ人なら、結果の指標とプロセスの指標も参考になります。
注:結果は実績そのもの プロセスは活動の質や量を示すものです。
収集する数字は、実数や、数字の比を使った比率という示し方になります。
例えば、不良は「何個」といった実数で、不良率なら、例 180個/10,000個=1.8%とすると比率になります。
QCDをベースに、結果とプロセスでの数値化のヒントです。
②情報加工
収集した情報を把握しやすいように視覚化します。グラフや表、統計手法などを活用します。例えば、不良数の多い順にグラフ化したパレート図を書けば、解決する不良の優先順位が読み取れます。
使用する手法は、QC手法や新QC手法が有効です。
QC手法と新QC手法の一覧です。
作り方や使い方は、こちらの記事を参照してください。
③数値化
ここまでくれば、あなたの意識を数値で書きやすくなります。
さきほどご紹介した定性的な現状の記述の例を修正してみましょう。
定性的な表現の例です。再度掲載します。
・○○製品の工程不良が多発している
・製品開発の納期遅れが頻発している
・報告書の作成に時間がかかっている
・受講者の様子に盛り上がりがかけている
・同じようなミスや事故が再発している
製造現場のパレート図から数値化してみましょう。
数値化し定量化された表現の例です。
その他の例です。
製品設計の納期不具合の例
介護現場での不具合の例
事務の非効率の問題例
数値化しにくいこと
製造現場や経営状況などは、数値化しやすいです。
一方で、人の暗黙知や文化に関わること、例えば職人の巧みの技などは、数値化が難しいと言われます。
が、工夫次第で、定性的な暗黙知の情報を数値化することも可能です。
そうした数値化で成功した例が、パナソニックが開発したパン焼き器です。発売当初大ブームを巻き起こしました。スタッフがパン職人に弟子入りして、匠の技を研究して「ひねり伸ばし」が美味しいパンを作り秘訣だと発見した事例です。
また、人の感情などを扱う問題も数値化がしにくい事例の1つです。
しかし、こうした数値化しにくい分野にAIの技術が採用されて、数値化しやすくなりました。すでに防災の分野では具体的な運用が開始されているようです。たとえば、最近のAI技術で顔の表情を喜怒哀楽で数値化できるようになっています。
すでに販売の現場に投入している企業もあるそうです。また、犯罪の予兆を測定する事例なども多く報告されれています。近い将来は感情の数値化も容易になるでしょう。
まとめ
数値化による現状把握技術は、効果的な問題解決のために欠かせません。データの収集と分析、KPIの設定により、より客観的に問題を把握し、効果的な解決策を見つけることに役立ちます。
AIの進歩も目覚ましのでこうした技術の動向にも目が離せません。皆さんも色々な数値化の手法を今のうちに学んでおくことをお勧めします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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終わり