戦略
アニメ「推しの子」2期が放映されています。1期に続き、はまっています。8月7日に放送された第17話のテーマは「成長」。イケメンだけが強みの演技下手のメルトが、自分の弱みを自覚して、たった1分の見せ場にすべてを賭けて、ひたすら努力して感情演技を爆発させ観客を感動に導く物語です。恥ずかしながら、いい年をして、もらい泣きしてしまいました。放送後のネットの反応も上々でした。
さて、感動の心理解説は、専門家にお任せして、私は診断士の視点から感動シーンを戦略手法で考察してみようという記事です。興味を持たれたらお付き合いください。
アニメ「推しの子」とは
アニメ【推しの子】は、原作赤坂アカ先生と作画横槍メンゴ先生による大ヒット漫画のアニメ化です。地方都市で産婦人科医として働くゴロー(雨宮吾郎)が、難病患者のさりなちゃんの影響を受け、アイドル星野アイの推しとなります。一方、アイは双子を内緒で出産、そのことで熱烈なファンによって刺殺されてしまいます。物語は、ゴローとさりなが、アイの息子星野アクアと娘ルビーとして転生することから始まる物語となっています。アクアは、母親の復讐のために芸能界に足を踏み入れていきます。2023年にアニメ第1期が放送され、2024年7月3日から第2期が「東京ブレイド」編として放送されています。
赤坂アカ先生は、TVドラマにもなった「かぐや姫は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦」も書かれている心理描写が素晴らしい原作者です。
みごとな心理描写が随所に見られる作品が、この「推しの子」です。
このアニメのお話が掲載されているのは、6巻になります。
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第17話「成長」の概要
話は、舞台「東京ブレイド」が開幕するシーンから始まります。
アニメなのに、まるで2.5次元舞台を見ているような映像表現でした。
第17話の主役はキザミ役のメルトです。
第1幕が終わり、物語は稽古現場へと戻ると、プロデューサーの鏑木と東京ブレイド責任者雷田の会話シーンになります。第1期で描かれた「今日は甘口で(今日あま)」の“演技が下手”と作者・吉祥寺頼子をはじめ周囲から酷評されたメルトを、なぜ起用したのか雷田が、鏑木に問います。鏑木は、メルトを「私情で推した」と言います。鏑木はメルトの変化から、「いや、君も気に入ると思って推したまでよ」「だって君も好きでしょ」「がむしゃらに努力する子」
話はメルトの回想シーンへ。中学入学後に自身がイケメンであると自覚し、「適当にやってもなんとなく上手くいく人生」で生きてきたと振り返ります。しかし、「今日あま」で自身の演技の未熟さに気付き、「東京ブレイド」稽古で、周囲の役者のレベルとの違いから役作りに苦悩していたのです。
ちなみに主な役者を、演技力と知名度でマッピングしたのがこちらです。
メルトは、どちらも主要メンバーとは比べものになりません。
毎日ランニングで体力作りをするなど真面目に舞台に取り組むメルト。
しかし、求められる演技のレベルに届きません。どうしたら良いかと、アクアに相談すると、「完全に下手だとナメてた役者がいきなりめちゃくちゃ凄いこと始めたら…」とアドバイスをもらいます。
開演まで、木刀が血まみれになって見せ場の技を習得するまで努力し、そして本番へ。
見せ場が来て、突然刀を上空に蹴り上げ、華麗なアクションを交えて見事にキャッチします。稽古した技が舞台で披露できた瞬間です。
原作漫画では実現困難だと思われた動きを完全に再現でき、作者あびこ先生も観客も大喜びします。
さらにメルトは、この見せ場の1分間を、役のきざみと自分を重ね悔しさが溢れんばかりの感情演技を爆発させます。その演技を観た「今日あま」の作者頼子も感動で涙させるのでした。
メルトの成長が熱く描かれた作品でした。こうしたアニメは泣けます。
漫画では難しいアニメならでは演出が随所に出てきます。良かったら、アニメで堪能してほしい作品でした。
なお、今夜11時30分からTVKで18話が放送されます。
また、ABEMAで、1期と2期の全話が無料で見ることができます。
・第1期全話+第2期(#12〜18)
配信日時:
2024年8月14日(水)夜11時30分〜翌朝9時15分
2024年8月15日(木)朝9時15分〜夜7時
配信チャンネル:ABEMAアニメチャンネル2
Amazon プライムでも放送しています。会員の方はこちらも便利です。
診断士の視点
アニメならではの表現力を存分に活かし、観る者の心を揺さぶる感動的な展開でしたが、診断士の視点からも参考になる点が多い作品でした。
舞台で感動を伝えた秘策を、戦略手法から分析してみます。
彼は、イケメンという強みを持ちますが、この舞台では通用しません。周囲の優秀な演者に囲まれ、自分の未熟さを痛感しています。
しかし、アクアのアドバイス、「下手さを活用し、見せ場の一点に絞って感情を込めた演技をすれば、観客は驚くだろう」の言葉を信じて、実現困難な技を、努力家という利点を活かして地道に修得し、舞台で成功させたのでした。
こうしたメルトの強みや弱み・機会や脅威を見える化する方法にSWOT分析があります。
SWOT分析は、自身の現状を類型化する手法です。ここでは詳しく紹介しません。知りたい方は以下をご覧ください。
さて、メルトの現状をSWOT分析したのがこちらです。
今回の「下手さを逆手に取った一点集中の演技が、観客の心をつかむ」で活かす点は、以下となります。
強み 努力家
弱み 演技が下手
機会 舞台で1分の見せ場がある
原作に高難度の技が出る
こうして得た特徴を、作戦に変える手法が、クロスSWOT分析です。
たとえば、弱みと機会をかけると、
弱み×機会 下手さを逆手に取って見せ場に1点集中する
と、アクアのアドバイスの理由が明らかになります。
この方法は、ランチェスター戦略における弱者の戦略と言われ、リソースを1点に集中して勝つ戦法でもあります。
また、機会と強みを掛け合わせると、勝つための作戦が得られます。
機会×強み 「難度の高い技を努力して身につける」です。
下手な役者が、想定していない演技をすると、そこに大きなギャップが生まれます。
経営戦略では、こうしたギャップの活用が定石となっています。
このメルトの示したギャップで、観客は驚き、それ以降の演技に深い意味を見いだそうとします。そこに、わずか1分のために磨き上げた感情演技をすることで、観客の心をつかむことができました。作戦は大成功でした。
本編は、メルトの成長物語でした。人が持つ才能や環境との関係性から、役者として観客を魅了することのヒントが得られる物語でした。
観客の予想を裏切ることが、感動を与えるという好事例だと感じました。
おわりに
今回は、推しの子2期ー第17話を診断士の視点で考察してみました。
人気のアニメも見方によって学ぶ機会になりますね。
今回の考察が参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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終わり