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信号機の色は?虹は何色?そんな色のお話から言葉という論理思考の部品について気付いた事を書いてみました。私の発見は「言葉とは不揃いな境界線」だということです。お時間があったらお付き合いください。
1.信号機の色は?
突然ですが、質問です。
信号機の光る色は何色でしょう?
こう聞かれても多くの人は、迷わず
青、黄、赤(順番は問いません)
と応えるのではないでしょうか?
たしかに信号機の3色は、「青・黄・赤」と表現されることが多く、免許更新の時に配られる交通教本にも、「青色の灯火は進むことができる」と書かれています。
でも…ですよ。
良ーく観ると、青は「緑」ぽっくないですか?
実際のLEDの信号機の青表示です。
微妙ですね(;゜ロ゜)
私には「緑色」に見えます。
信号機はなぜ緑なのに青と表現するのかを調べてみました。
JAFのHPに分かりやすい説明がされていました。
原文を確認したい人はこちらからどうぞ
なぜ信号機は赤黄緑の3色が使われているの? | JAF クルマ何でも質問箱
その理由は、日本語の「青」が表す範囲の広さが影響しているのだそうです。
私たちは、青野菜、青物、青葉など緑色のものを青と呼ぶ場面をよく目にします。
こうした事情から、信号機の緑信号も青信号と表現するようになったという説が有力です。青信号という呼び名が一般に定着したことから、1947年(昭和22年)に法令でも青信号と呼ぶようになりました。さらに1974年(昭和48年)以降に作られた信号機は、それまでの緑より青に近い緑色に変わっているそうです。
(その他に、光の3原色が、青、黄、赤だからという説もあるそうです)
(古いランプ式の信号機)
(最近のLEDの信号機)
道理で、微妙な青色でした。
色に関わる言葉は、面白いエピソードが多そうです。
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2.虹は何色?
色のお話だったら、虹色のエピソードも興味深いです。「虹の色は何色にみえますか?」というお話です。
「虹は7色」
赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色という回答がたぶん多いかと思います。
ところがです。
虹の色を何色と答えるかは、地域や民族・時代により大きく異なるのだそうです。天気予報のWeather newsにこんな例が載っていました。
【虹蔵不見】何色に見えるか捉え方次第!?国で異なる虹の色 - ウェザーニュース
アフリカのアル族は、虹は8色に見えるんだそうです。
アメリカは、6色。
ドイツは、5色。
そして、南アジアのバイガ族は、なんと2色なんだとか…。
詳細は、Weather newsの記事から引用します。
「虹は何色か」と質問された時に、世界で解答の仕方が変わってくるという話もあります。
日本やアメリカ、フランスなどは「◯色」とはっきり答えます。しかし、ロシアなどでは「色々」「しいて言うなら◯色じゃないかな」など虹の色が何色なのか固定しません。つまり、“何色あるか”というよりは、“何色と見ようとするのか”ということが大きな違いにつながっているようです。日本では、虹は赤・橙・黃・緑・青・藍・紫の7色と広く認識されています。
しかし、様々な国の虹を調べてみると、共通して7色というわけではないようです。
図を見ると、多い国では8色もあり、一番少ない国だと2色となっています。
7色が一般的だと思っている日本人にとって、2色など少ない数で表されるのは少々驚きですね。
ちなみに、インドネシア(フローレス島)は、赤地に黃・緑・青の縞があるように見えているようです。「じゃあ、日本以外の国で虹を見れば、4色や2色に見えたりするの?」
いえいえ、国ごとに色の数が大きく異なるのは、実際に見ている虹の色が違うからではありません。
例えば、虹を2色としているバイガ族は、明るい色(赤や黃など暖色系)を赤、暗い色(青や紫など寒色系)を黒とザックリ分けているようです。
同じ色を見ていても、その色を表現する言葉があるのか、ないのかで虹の色数も変わってくるということです。
つまり、色を表現する言葉の存在や見方の違いが重要であったりします。
私たち日本人は、多くの人が虹の色は7色という認識を持っていますが、他の国では違う色数もあるということです。特に、色を表現する言葉があるかも影響しているのは驚きです。
こうした国による認識の違いを心理学的には、次のように説明できそうです。
一般的にこのように、あることがらに関する、私たちの中にすでに存在しているひとまとまりの知識を、心理学、特に認知心理学では「スキーマ」と呼びます。
さきほどの虹の写真を見て、何色と聞かれると、日本人の場合は、これまでの学習した事柄や親などの説明から、虹についての知識が活性化して、頭の中でその映像に一致する「スキーマ」を探索して「七色の虹」という言葉を見つけてくれると理解できます。
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3.言葉は不揃いな境界線
さて、日本人の多くが「虹は7色」という理解の仕方をしていることは分かりましたが、実際、なぜ虹色に見えるかも振り返ってみましょう。
それは、太陽光が空に浮かんだ小さな水の粒で分解されるからでしたね。小学生の頃に理科の時間に、プリズムを使った太陽光を分解する実験を思い出されたかと思います。
引用:キャノンHPより
この光の分解の様子をもう少し詳しく見ていくと、不思議なことに気付きます。
波長というのは、光(可視光線)という電磁波の1サイクルの長さのことです。
(1nmは、1×10のマイナス9乗メートルのこと。髪の毛が80,000nmになります)
光よりさらに長い波長は、テレビなどの電波と言われます。逆に短いとエックス線などの放射線とも呼ばれる波になります。
この可視光線の赤の光は、波長で示すと610nmから770nmと幅が160nmあります。
この調子で各色の波長と幅を書くと
赤 610~770nm(幅160)
橙 590~610nm(幅20)
黄 570~590nm(幅20)
緑 500~570nm(幅70)
青 460~500nm(幅40)
藍 430~460nm(幅30)
紫 380~430nm(幅50)
このように各色の幅が均等ではないことがわかります。
赤の160nmにくらべると、橙色や黄色はたった20nmの幅しかありません。八分の一です。一方、さきほどお話が出た緑は70nmの幅があります。
このように各色の区切りを線引きをした境を、境界線といいますが、色の境界線は、なんとも不揃いな印象を持ちます。
そう今回の発見は、
言葉とは不揃いな境界線
で成り立っている、ということです。
そういえば、白ワインもグラスに注ぐと、なんとなく黄色ぽかったりします。
また、赤ワインは、「ワインレッド」という言葉もあるように独特の赤です。
先人達が色々なモノに境界線を引いて、それに名前を付けています。そして、それが一般に受け入れられると、言葉のスキーマとなって定着しているんだなと思う次第です。
4.おわりに
今日は、言葉という部品の成り立ちを、色を題材にして考えてみました。
先人達が付けた言葉が、自身のスキーマとして利用されているのでした。そして、その言葉はけっこう不揃いな境界線で出来ていることがうかがえます。
私たちは論理的な思考をする上で、言葉という部品を利用します。そして、それを論理的に構成して伝えようとします。一方で、その部品となる言葉は意外といい加減(言い過ぎ?)らしい。結局は、その言葉が、スキーマとして会話するメンバーで共有できてるかの方が重要となるのですかね。
私が専門とする経営学でも、沢山の専門用語や手法が言葉として用いられます。そして、経営を議論する場合は、それらの言葉を共通言語として理解していることが大切だと言われます。共通言語とは、スキーマであり、単なる記号に過ぎないというお話なのかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
こうした記事も如何でしょうか?
終わり