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混乱期こそランチェスター戦略を利用しよう

手法

ランチェスター戦略の俯瞰図

混乱期ほどランチェスター戦略のような戦い方の原則が注目されるそうです。今回は、そのランチェスター戦略の基本的な考え方をまとめてみました。

弱者の勝ち方や、強者が取る戦略を知ること、市場占有率の目標値などを理解して、一層混乱しそうな来年の航海を無事に乗り切っていくヒントになれば幸いです。お時間があったらお付き合いください。

 

目次

この記事は、2019年7月15日の記事を大幅に改編したものです。

 

1.ランチェスター戦略を俯瞰

 勝ち方に、ルールがあることを研究したのがイギリスのランチェスターさんです。彼は飛行機の研究をしており、翼の理論の基礎を作ったことでも知られています。


その彼が、第1次世界大戦が勃発した1914年ごろ飛行機が空中戦で敵味方どちらが何機撃墜されるかに興味を持ち研究しました。その研究の成果から、兵力数と損害量についての2つの法則を導き出しました。それが、ランチェスターの第1法則と第2法則です。これらは、現代における戦略立案の基礎となった法則です。

 

また、この戦略モデルから、市場占有率の目標値が導き出せ、企業が市場参入や維持する上での重要な指標となりました。

こうしたランチェスター戦略の全体像を俯瞰図した図がこちらです。

ランチェスター戦略の俯瞰図

それでは、確認していきましょう。

 

2.ランチェスターの第1法則

第1法則は、弱者の戦略と言われます。
新規参入者や資源の少ない弱者が勝つべき方法論を知ることができます。たとえば、一騎打ちの法則とも呼ばれ、戦いは接近戦における1対1の戦いを前提に導き出しています。


こうした戦いでは、能力(E=1)が敵味方同じであれば、兵士の数が多い方が勝つという、きわめて単純明快な法則です。


たとえば、5対3の空中戦なら、数の多い方が2機生還することになります。

ランチェスター戦略の第1法則の例図

ランチェスターの第一法則の式

M0-M=E(N0-N) 

→ E=1ならば、

M0-N0=M
5-3=2

単純に戦えば、強者が勝ちます。

しかし、弱者の戦略を活用することで強者に勝つことができます。かつて、日本の戦国時代でも、弱者の戦略を無意識に活用していた事例が多く残っています。たとえば、織田信長今川義元と戦った桶狭間の戦いです。小田軍は4千人に対して今川軍が2万5千人だったそうです。相手が休んでいる時を狙った奇襲戦でした。

弱者が勝つための戦略を整理すると次の5つになります。

①一点集中戦
②一騎打ち
③接近戦
④局地戦
⑤陽動戦

勝ち方の事例を見てみましょう。

①一点集中戦
その地域では品揃えの少ない服を集中的に販売する 
例 XLサイズ専門の婦人服店

 

②一騎打ち
商品を細分化してスキマ商品を販売する
例 ミニホチキス(プラス)

 

③接近戦
新規出店した店舗の想定顧客にチラシの投げ込みを徹底する
例 ヨドバシカメラ

④局地戦
勝てる見込みのある小さい市場で販売
例 セイコーマート(北海道限定コンビニ)

⑤陽動戦
相手が想定していない商品やサービスを出す
例 朝専用缶コーヒー(アサヒ飲料

 

いずれも強者が手の回らない、すきまやニッチを攻めていることがポイントです。

 

3.ランチェスターの第2法則

次は、強者の戦略といわれるランチェスターの第2法則を見ていきましょう。強者の戦い方を知ることで、弱者の戦略の立て方を工夫することが出来ます。

第2法則は、確率戦闘の法則ともいいます。この戦いは最新資源の総合戦となります。保有する兵器は、複数の敵を同時に攻撃できます。そのため、戦闘の攻撃力は保有数の2乗に比例します。


このため、たとえば近代戦の空中戦では5対3の戦いでも、5×5-3×3=4×4 となり勝者の生還は4機となります。

ランチェスターの第2法則の図


つまり、戦闘の保有資源の多い方が圧倒的な勝利を得ることから、強者の戦略と言われるゆえんです。戦い方は主に5つになります。

①物量戦
②複合戦
③間接戦
④広域戦
⑤包囲戦

強者の事例は、大体想像が付くでしょうから簡単にご紹介します。

①物量戦
②複合戦

 最近発表されたトヨタの自動車ラインナップは、ガソリン車からEV車、車種の多さから物量的にもラインナップの広さ(複合戦)で、トップ企業らしいやり方です。

③間接戦
④広域戦

 アサヒは最近キリンにトップを奪われて苦戦しています。その中で、反撃してきたのが、アサヒ生ビールです。このビールは、新垣結衣のCM「おつかれ生です」というキャッチフレーズと共に知らない人はいないと思われるくらい売れました。昨年、2022年1月から9月で479万箱を販売し、2022年のヒット商品にランクインしています。商品の良さもありますが、徹底した広告戦略による間接戦、広域戦の好例です。

⑤包囲戦
 
日産の「サクラ」は日産発の軽の電気自動車です。すべての車種のEV化を宣言している日産が、満を持して発売しました。4ヵ月で3万6000台を受注という快挙を成し遂げています。


以上、ランチェスターの2つの法則からそれぞれの戦い方が見えてきます。


ランチェスターの第一法則(弱者の戦略)
・敵味方がはっきりわかる狭い地域での局地戦
・1対1の戦い方が出来る場合
・接近戦


ランチェスターの第二法則(強者の戦略)
・敵味方が視界にすべて入らない広域戦
・最新の兵器を使った確率戦
・遠隔戦

 

 

4.市場占有率別の目標値

 ランチェスターの法則を元に、戦闘力と戦術力の数式化をしたのがクープマンのチームです。第2次世界大戦でドイツの攻撃に苦戦していたイギリスが、作戦研究の中で生み出された中にクープマンの目標値があります。クープマンモデルとも言います。
クープマンモデルでは、「戦略力2:戦術力1」の資源配分が最も成果が大きいと結論を出しています。そして、戦後そのモデルを解析して市場シェアの目標値を導き出したのが、日本の田岡、斧田先生らです。

 

市場シェアの3大目標値

まずは、強者が目標とする市場シェアの3大目標値になります。

ランチェスター戦略モデルから導かれる市場シェアの三大目標値

市場シェアの三大目標値と言われ、色々な場面で利用されています。
73.9% 上限目標値
41.7% 安定目標値
26.1% 下限目標値

たとえば、市場シェアの73.9%を取った企業は市場を独占的に扱えるシェアの値です。一方、26.1%は、100%-73.9%=26.1%の値から来ており、弱者が強者の位置づけを狙う上で最低限の市場占有率となります。

 

さらに、現実的なシェアを考えた時に分散している状況からの下限目標26.1%を目指す上での中間目標値を4つ設定しています。

 

分散型市場における4つの目標値

ランチェスター戦略モデルから導かれ分散型市場における4つの目標値

弱者は、これらの数値を目標にしていきます。

19.3% 上位目標値
10.9% 影響目標値
 6.8% 存在目標値
 2.8% 拠点目標値

たとえば、新規参入した企業なら、当面の目標値は2.8%です。市場参入を実現出来たかの目安になります。この数値を実現出来ない時は、撤退も想定しなければなりません。そして、次に目指すのが、存在目標値の6.8%です。ここまで、シェアがあがると顧客からの認知してもらえている証となります。

そして、次の狙いが影響目標値の10.9%です。ここまで市場占有率を上げられると、強者の道が開けます。最後に目標値19.3%を目指すことで上位グループへの資格が得られることになります。

 

どうでしょうか?
こうした数字を戦略を立てる時に活用することで、計画のマイルストーンや戦略の方向性が考えやすくなりますね。

 

 

 

5.実際の市場占有率の例

 

 市場占有率、いわゆる市場シェアはマーケットにおける自社の位置づけを知ることができるわかりやすい指標です。各目標値について実際の企業の例をいくつか見てみましょう。

 

上限目標値(73.9%)


この数値を達成している企業はそう多くありません。その中で、駐車場業界で圧倒的なシェアを持っている会社があります。


パーク24という会社です。
市場占有率がなんと80%です。


この会社はタイムス24と言った方が分かりやすいでしょう。近隣の空き地や企業の駐車場を、いつの間にかタイム24に変えている企業です。

 

安定目標値(41.7%)


この数値を達成している企業はけっこうあります。


例(平成27-28年時)
ブリヂストン(タイヤ) 55.9%
・ANAHD(航空)   52.6%
・野村HD(証券)    46.4%
・NTTドコモ(携帯)  45.5%
トヨタ(自動車)    41.7%


安定的な目標値と言われるように、この数値を実現している企業は、その市場での認知度も高いトップ企業の位置にいます。


しかし、この安定目標を達成していてもトップを転落するケースもあります。


ご存じの例かと思いますが、アサヒビールの例をご紹介します。
1985年当時のビールのトップ企業はキリンでした。シェアは61.4%とダントツですた。一方のアサヒはシェア9.6%と影響目標値を下回った存在目標値を維持しているにすぎない企業でした。しかし、「スーパードライ」の大ヒットを飛ばし、当時の安定的目標値をクリアしていたキリンを2000年頃に逆転した事例です。まさに一点集中作戦による大逆転劇です。

とはいえ、2020年のシェアでは、ふたたびキリンが僅差ながら逆転し一位に返り咲いています。理由は、スーパードライに頼り過ぎて飽きられたというのがその筋の噂です。

ビールシェアの推移キリンが一位復活

出所:アサヒグループHD HPの資料に最新のデータを追加しまねき猫が作成

株主・投資家のみなさまへ | アサヒグループホールディングス

 

とはいえ、アサヒの経営危機を乗り越えて大ヒットは、戦略史に記録されています。 たとえば、絶版で中古しかありませんが、以下の書籍から経緯を知ることができます。

ビール15年戦争―すべてはドライから始まった (日経ビジネス人文庫)
 

 

下限目標値(26.1%)


この目標値を達成している企業もかなりの数に上ります。

少し紹介します。

東京海上HD(損害保険) 34.5%
オリックス(リース)   37.0%
大和ハウス(住宅)    31.3%
日本郵船(海運)     39.8%
NTTデータ(IT)      25.2%

 

詳細は割愛します。


こちらには、2020年から2021年の売上上位3社と市場シェアが紹介されているのでご覧になってみてください。
参照:業界動向サーチ

業界売上高シェア一覧-最新の売上高上位3社のシェアを分析!-業界動向サーチ

 

 

 

6.まとめ

 ランチェスターの第一法則
(弱者の戦略)
戦い方
・敵味方がはっきりわかる狭い地域での局地戦
・1対1の戦い方が出来る場合
・接近戦


ランチェスターの第二法則
(強者の戦略)
戦い方
・敵味方が視界にすべて入らない広域戦
・最新の兵器を使った確率戦
・遠隔戦


クープマンモデル
「戦略力2:戦術力1」の資源配分が最も成果が大きい


市場シェアの目標値(強者のシェア)
市場シェアの三大目標値
73.9% 上限目標値
41.7% 安定目標値
26.1% 下限目標値


現実的なシェアの中間目標値(弱者のシェア)
19.3% 上位目標値
10.9% 影響目標値
 6.8% 存在目標値
 2.8% 拠点目標値


戦略を立てる際のマイルストン設定に役立ててみましょう。

 

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終わり