想定外という言葉は、2011年の福島原発事故の後から耳にすることが多くなった言葉の1つだと感じています。一方で、想定外を正しく理解できていないで用いているケースもよく目にします。今日は、問題を考える上で認識しておきたい想定の内と外の範囲についてお話ししたいと思います。
問題を検討する場合、製品・サービスなどがどのような点を考えて作られたのかを知っておくことが大切です。どこまでが想定されていて(想定内)、想定されていないことは何か(想定外)を知ることで、問題を考える上での変化点やギャップを得やすくなります。
想定するとは、製品やサービスを設計する上で、考える範囲を決めて制約条件を設定(仮定)することを言います。
たとえば、スマートホンでもっとも売れているiPhoneの動作環境の想定の範囲(仕様)を見ると、動作温度 0℃~35℃、相対湿度5%~95%と書いてあります。つまり、この製品は35℃以上では動作を保証していないことになります。これは、実生活において現実的でない温度は想定(保証)しないことで、製品開発の考えなければならない範囲を減らし、研究費を無制限に拡大しないようにするためです。この保証の範囲が、考える範囲を決める前提となります。
実際の製品は、35℃以上でも動作します。それは、保証の範囲からある割合で拡大した設計条件を設定し制約条件とすることによるものです。
ここでは、動作環境の仕様として温度と湿度だけで示しました。しかし、たとえばスマートホンの設計の現場では、電波送受信の設計条件、アプリが動作する設計条件、イヤホンや外部電源、パソコンとの信号の受け渡しの設計条件など多くの設計条件が前提として規定されます。
スマートホンであれば、こうした設計条件を製品仕様書などの資料にまとめることになります。多くのことを検討しなければならないので、数100ページに及ぶことが一般的です。
また、ここでは製品仕様を例に説明しましたが、製品を作る上では、製造するための製造仕様書、製品が正しく動作するかを確認する選別(測定)仕様書、外観などの異常がないかを確認する外観検査仕様書など多くの仕様と呼ばれる想定がされています。
こうした仕様書は、多くの場合利用する側には開示されていません。消費者からはどのように想定したかはブラックボックスです。このため、何か大きな問題が起きると、そのことは想定の内だったのか外だったのかニュースなどの話題になったりします。
モノ作りの現場では、大きな問題を起こさないようこの想定をしっかり行い仕様書に反映していくのですが、人間のすることなのでどうしてもモレや抜けが発生します。そのため、前回書いたようなハインリッヒの法則に沿って見えない問題を検討することが重要になります。また、PDCAのサイクルを回して問題が小さいうちに次の開発ではその問題を未然防止する策を盛り込んで改善しておくことを行います。
今日は、問題を考える前提となる想定の内と外について書いてみました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。